海外赴任から帰国し、マンション住まいだったMさん夫妻。いずれは一戸建て住宅に住みたいと思っていました。時は満ち、設計をU建築設計室の臼井徹さんに依頼し、念願だった一戸建てを完成させました。Mさんの要望は「子どもたちが楽しく暮らせる家」。それに応えて臼井さんが提案したのは、2階のDKとリビングの床レベルを半階ずらしてL型に連続させたプランでした。
すべての画像を見る(全14枚)段差なくリビングとつながる大きなテラス
リビングとつながるテラスは2階面積の約半分の占める広さ。床がリビングと同じ高さで、テラスはリビングの延長のようです。「大胆なアイデアに魅力を感じました」と夫。「DKとリビング、テラスの高低差を楽しむ家というコンセプトです。それぞれの居場所を行き来するたびに、見える風景が変わる楽しさがあります」(臼井さん)
テラスでは子どもたちがハンモックに寝そべってゆらゆらしたり、夏はプールで水遊びをしたり。白い壁をスクリーンにして映画を上映したこともあるそうです。テラスの床レベルはダイニングに座る人の目の高さとほぼ同じなので、親が室内にいるときにはテラスで遊ぶ子どもたちの姿がより身近に感じられます。
チーク材のドアがアクセントの外観。2階北側に配置したリビングの天井高を最大限に確保するための形状です。
フロア全体を見渡せるキッチン
キッチンはコンパクトなI型のペニンシュラタイプ。リビングから見下ろす形になるので、背景のように空間にシンプルな白いキッチンをオーダーしました。キッチン家電もデザイン性を重視し、同じ白で揃えています。
コンパクトなキッチンは少ない動きで作業できるがメリットがあります。シンクからIH調理器へは数歩、ウォールキャビネットへは振り返るだけ。必要な設備も絞り込まれていてムダがありません。
「リビングで子どもたちが宿題をしたり、ハンモックで遊んだりしている姿をキッチンから見ていると、いいなって思います」(妻)。
オーダーキッチンは、システムズヤジマの製作。手元を隠す立ち上がりをキッチンの周囲に設けました。「リーズナブルで納まりがきれい」(臼井さん)加えて、ワークトップの材質、レンジフードの色、食洗器のメーカーも自由に選べるのも特徴です。
食洗機は赴任先でも使っていたミーレ。「食器の入れやすさとブランド力で選びました」(妻)。コンロは手入れのラクなIH調理器 シンク下には自治体の助成金をもとに購入した生ゴミ処理機も付けました。
水栓金具はデザイン性の高いグローエ社と家庭用ビルトイン浄水器メーカーが共同開発したモデル。
炊飯器とオーブントースターは引き出して使えるスライド棚に収納。
たっぷり入る床下収納。「収納スペースが限られているので重宝しています」と妻。お米、食用油、保存食など、ストックしておきたいものをパントリー代わりに収納しています。
のびのびと遊べる天井の高いリビング
ハンモックが好きな妻の要望でリビングとテラスの2か所にハンモックを設置。次女はリビングのハンモックをブランコ代わりにして遊んでいます。
リビングで本を読む長女。天井が高くテラスに面しているので開放感があります。
それぞれ好きな色を選んで壁を塗装
それぞれの個室では壁の一面だけ、好きな色を選んで塗装しました。1階テラスに面した寝室はブルーグレーの壁。北欧デザインの照明器具がよく似合います。
長女の部屋にはトップライトを設けました。トップライトから自然の光が降り注ぎ、朝は日差しが入ると目覚めるそうです。
上階の気配が伝わる吹き抜けの階段。左の通路の奥にはシンボルツリーを植えた1階テラスがあります。
毎日の食事は洋食が中心というMさん一家。夫は酒の肴をつくるのも好きで、週末には料理の腕を振るうこともあるそう。コンパクトなキッチンは、「ふたり同時に作業はできませんが、下ごしらえと焼き方のように、分担作業をしています」と妻。リビングやテラスで遊ぶ子どもたちを眺めながら楽しむキッチンは、ふたりのお気に入りの場所のようです。
設計/U建築設計室
取材/安藤陽子
撮影/山川修一(本誌)
※情報は「住まいの設計2019.04月号」掲載時のものです。