東京・世田谷区の自邸を建て替えた加納さん。その設計をステューディオ2アーキテクツの二宮博さんと菱谷和子さんに依頼しました。以前の住まいは、中庭を挟んでLDKと夫の仕事場が向き合うプランだったそうです。その家は建物が密集するエリアにあっても「中庭越しに空が見える開放感と、向かいの家が視界に入らない点が気に入っていた」と夫。そのお気に入りポイントを引き継ぎながら、新たなアイデアが加味された住まいになっています。
すべての画像を見る(全6枚)LDKの高床「パレット」と空中バルコニー「空庭」
希望したのは、育ち盛りの子どもたちが遊ぶ広い2階リビング。この希望を叶えると以前のように中庭を置くプランは難しい。
そこで二宮さんと菱谷さんは、立体的な発想で、中庭に代わる外部空間を取り入れようという試みました。それがLDKの「パレット」と「空庭」です。
「パレット」はダイニングキッチンよりも70㎝高くした舞台のような床座のリビングで、「空庭」は勾配天井の一部を欠き取って設けた空中バルコニー。両者高さを近づけることで、視線が自然に高窓に向かい、空を眺めて暮らす開放感が楽しめるようになったそうです。
「キッチンに立つと正面の空庭を通して月や星、ときには虹も見えます。空模様の移り変わりがおもしろいですね」と妻。
「空庭」の下にあたる「パレット」の奥は、夫の仕事場を兼ねた家族全員のワークステーションになっています。「空庭」では食事やプール遊びを楽しんでいるそうです。
「空庭」は外壁で隠されているため、以前の住まいと同様にプライバシーも守られています。
高低差を生かした立体的な空間使い
ワークステーションに向かうときは、「空庭」の下に潜っていくような感覚です。「パレット」の床下はすべて収納スペースとして利用できるようになっています。また「空庭」の反対側、DKの上部はロフトで、ここも子どもたちの遊び場になっています。
1階にはコピー機などを置いた夫のワークブース、寝室と子ども室、WICがあります。寝室と子ども室はワンルームになっていますが、子どもたちの成長に合わせて間仕切ることも可能です。
外部空間の取り入れ方がいかにも建築家らしい発想。2階LDK中央の床面レベルを上げて視線をコントロールする方法や「パレット」「空庭」などのネーミングもそのスペースをイメージしやすいですね。建築家住宅の見どころはタテの空間構成なのかもしれません。
設計/ステューディオ2 アーキテクツ
取材/安藤陽子
撮影/大槻夏路
※情報は「住まいの設計2019年10月号」掲載時のものです。