ちまたにあふれる家事の手引書。最近では、「あるがままを受け入れて、無理はしなくていい」というスタンスのものが流行です。「片づけ本」についても同様の傾向。かつては、人の目を意識した「完璧な片づけ」「美しいしまい方」をウリにした書籍が多くみられましたが、今は片づけをする人の心の平穏や家族みんなの居心地のよさを重視するものが増えています。

精神科医の観点から「開き直り収納」を提唱する奥田弘美先生によると、片づけの本来の目的は、たったの3つだそう。

「『健康のため清潔・安全を維持すること』『ものを紛失しないこと』『欲しいものがすぐに取り出せること』が片づけの目的。これさえクリアできていれば、ものが出ていようが、生活感あふれようがかまわないじゃないか、と開き直っていいんです」

「開き直り」収納のお悩みQ&A!できることだけやればいいんです

「家をきれいにしておかなければ」「部屋が片づいていない」という思いは、ストレスや罪悪感の元。奥田先生は、もっと開き直って家の片づけはやりすごしていいと説きます。「こんな場合はどうする?」といった収納にまつわるお悩みに、奥田先生がわかりやすく答えてくれました。

Q:「開き直りの収納」といっても、どこから取り入れていいかわからない

A:いちばんストレスを感じている場所から取り入れてみましょう。

ストレスを感じる場所
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普段とくに気になっている場所から、ゆるい収納に切り替えると成果がわかりやすいです。家族が床にものを放りっぱなしなのがイヤなら、放りがちなところに収納場所をつくるなど、うまく片づかないと悩むよりも、今までのルールをやめてみる方が意外と簡単だったりしますよ。

Q:ものがあふれたときの捨て方がわからない。

A:ひとつ買ったらひとつ捨てる「ところてん方式」がおすすめです。

ところてん

あふれている、というのは今の収納に合った量を超えた状況。劣化がひどいなどいちばん状態の悪いものを選択し、処分しましょう。その後はひとつ買ったらどれかひとつを選んで押し出すように捨てる「ところてん方式」にすれば、考えずに捨てられます。

Q:出しっぱなしにしたいけど、ごちゃごちゃするのはストレス。どうしたらいい?

A:片づけに時間をかけるのとどっちがストレスか考えてみて。

天秤

家は自分たち家族が「素」でいられる場所。それなのに、あなたが必要以上の片づけで疲れてしまっては意味がありません。家族の健康のことを考えれば、きちんとした食事や十分な睡眠時間の確保に気を使いましょう。

Q:同じものをたくさん持つのってスペースのムダなのでは?

A:たくさんあるのなら使う場所ごとに置いてフル活用させて。

捨てるor使う

家の中の複数の場所で使うものは、使う場ごとに配置すれば、すぐ手にできて時間の節約になります。もちろんあえて買う必要はありませんが、すでにたくさんあるものなら、処分せずに分散し、フル活用させた方がスペースもものもムダになりません。

Q:使わないものをとっておくのが不安…。捨てなくていいの?

A:無理して捨てなくていいんです。別の用途を考えてみましょう。

別の用途

捨てなければという強迫観念にとらわれ、かといって思いきりよく捨てることもできない…。ならばなにか使い道はないか考えてみましょう。たまった菓子箱は引き出しの仕切りにしたり、古い服は切ってウエスにするなど、一度別の用途に使うと手放しやすくなります。

Q:一時置き場が何か所も増えちゃったらどうする?

A:人が集まる場所なら、数を増やしてもよいことにしてみては。

一時置き

一時置き場は、各部屋に1か所を基準に、床にじか置きしないようカゴやイスなどを設置すると、片づけや掃除がラク。ですが、確かに家族が利用するリビングや玄関には仮置き場が増えがち。特別にものが多くなる場合、1部屋に2~3か所までは設けてもよいことにしてみては。

Q:義母、親せき、友人など人が来る家なので、人の目を無視できない!

A:正直に「片づけは苦手」と言ってしまえばOK。

片づけ苦手

ほとんどの人は自分の家と同レベルか、むしろそれ以下の片づけ具合の方が気がラクなもの。義母であろうと同じです。見栄をはらずに素直に片づけが苦手だと告白してしまえば、お互いにハードルが下がります。片づけ好きな人なら「私がやってあげる」と手伝ってくれたりすることもあります。

Q:子どもの教育上、うちの中にものが多いのは悪影響なのでは?

A:想像力を豊かにする教材ととらえましょう。

子ども

大人がゴミやガラクタと思うものも、子どもにとっては宝の山。目についたものを手に取り、好きなものをつくるのは、想像力を豊かにし、脳を鍛えてくれます。きれいさっぱりな空間にいると、子どもは工夫する気持ちがわきにくいという専門家の意見もあります。ただし、危険なものはきちんと大人が片づけておくこと。

Q:開き直った瞬間から、部屋がどんどん乱れていきそうで怖い!

A:清潔な状態がキープできれば、多少乱れいてもよしと開き直って。

多少の乱れ

最初にご紹介したように、片づけの本質は3つだけ。本当に必要な片づけレベルとは、あなたと家族が心地よくくつろげて、快適で清潔に暮らせる程度のこと。多少部屋が乱れていても、掃除しやすく、生活するのに問題なければ「これでよし」と開き直っていいんです。