以前のマンションが長女の誕生で手狭になったと感じた和田さん夫妻。1年以上かけて物件探しをするなか、たまたま目にしたチラシで見つけたのが東京都世田谷区のマンションでした。昭和56年築で、専有面積は114㎡。開口部が多く、広いルーフバルコニーがある希少なメゾネットマンションです。すぐに内見し、即購入したほど魅力的な物件でしたが、前の持ち主は花柄の壁紙などでラグジュアリーにリノベーション済みでした。そこで和田さん夫妻は、自分たちのテイストに合うように再リノベを行いました。
オープンなLDKを多彩な空間に演出
リノベはランドスケーププロダクツが運営するインテリアショップのプレイマウンテンに依頼する、と最初から決めていたそうです。
ファウンダーの中原慎一郎さんとBEAMSのスタイリングディレクターである夫は以前から知り合いで、息もぴったり。「お互いに好きなものが分かっているので、すごく楽しかったですね。3つ選択肢を出してくれれば、ドンピシャのものが必ずありました」(夫)。
リノベではまず、4階に位置するリビングの快適さをリクエスト。LDとキッチン、個室を分けていた間仕切りを除き、ワンルーム化しました。オープンな空間には窓とルーフバルコニーが2方向にあり、明るさも申し分ありません。
ルーフバルコニーはウッドデッキと板塀で、アウトドアリビングに。
オークの床と漆喰壁がベースのLDは、ミッドセンチュリーの椅子やソファ、李朝の焼き物、イギリスの大鍋、久留米絣のカーテン、アフリカのお面などが混在。ワンルームとはいえ、いくつものコーナーがあり、家族は思い思いの場所で過ごせるようになっています。
夫妻の後方に見えているのは、和テイストのものを集めたコーナーです。
キッチンにも大正末期の食器棚があるかと思えば、その奥には夫がロサンゼルスで見つけたスチール製の古い鍋置きが……。国籍や年代も超えたアイテムたちが、空間に見事にとけ込んでいますね。
キッチンはセミオープンで、作業効率のよいコの字型です。「すごく使いやすいです」(妻)。廃材が出ないように、壁のタイルは既存タイルの上から貼りました。
造り付け棚の板ひとつにもこだわりが見られるトイレ。「材木屋さんに行って、好きな板を選びました」(夫)。洗面台は木のカウンターと小鹿田(おんた)焼の洗面ボウルで造作。手仕事ならではの「飛びかんな」模様が特徴的です。
メゾネットだからこそのディスプレーも!
玄関の腰壁は大谷石。スリップウエアというイギリスの技法で焼いたタイルを組み合わせた額も、壁のアクセントになっています。靴収納は古道具屋で見つけた昭和の下駄箱です。
階段の吹き抜けに下がっているのは、イームズのギプス。戦時中につくられた希少なコレクターズアイテムです。大きなオブジェが飾れるのは、メゾネットマンションならではですね。
5階ホールに面するブルーの壁の中は納戸です。民芸調ののれんや額からは、温もりが感じられます。5階に3室あった個室のうちの2室をつなげ、この納戸で趣味のコーナーと子ども室を分けています。
カウンターがあるほうが趣味のコーナー、勉強机があるほうが子ども室です。5階は既存フローリングをそのまま使用するなど、リノベは最小限に。壁と天井はDIYしたそうです。
ルーフバルコニーに面している5階の寝室。カーテンは柳宗理デザインの布です。
こだわりのセレクトはコレ!
プレイマウンテンでは、家具などもセレクトしました。
左は1960年代のブラジルのソファです。座った瞬間に「買います!」と言ってしまったほど、抜群の座り心地。右のミッドセンチュリー感が漂うタイルは、キッチンの壁に貼ったもの。1940年代創業のカリフォルニアの陶器メーカー、ヒースセラミックス社製です。
左のバルコニーに置いた椅子は、イギリスのデザイナー、ロビン・デイ作のポロチェア。ポリプロリレン製で屋外でも使用できます。右はワイヤーシリーズで知られる家具デザイナー、ハリー・ベルトイアの子ども用チェアです。
リノベをしたのは8年前のこと。どの空間からも和田さん夫妻らしさがにじみ出ていました。
設計/Playmountain / Landscape Products
撮影/水谷綾子
※情報は「リライフプラスvol.29」取材時のものです