様々なジャンルで活躍する方をゲストに迎えて、“すまい”にまつわるお話を伺うこのシリーズ。それぞれのライフスタイルの中で、「家に求めるもの」や「大切にしているもの」を深掘りしていきます。第11回目は、アフリカの少数民族を撮影し、『ヨシダ、裸でアフリカをゆく』(小社刊)を上梓した写真家のヨシダナギさんが登場。ヨシダさんが考える住まいとは、どんな空間なのだろうか?
アフリカの家は、ご近所さんもその家の家族のように過ごす場所
「アフリカでは、家は大勢の人がいる空間。人とコミュニケートする場が、家なんですよ」
裸族と心を通じさせるため、自らも服を脱ぎ捨て、裸になってシャッターを切る――。
そんなユニークな撮影方法がメディアに取り上げられて、瞬く間に話題の人となったヨシダさんは、このように話した。
すべての画像を見る(全3枚)「そこの家族とばかり思っていた人が、『じゃ、帰るね』と家を出て行って、実は近所のおばちゃんだったことが判明したり(笑)。
アフリカの家は、ご近所さんもその家の家族のように過ごす場所。
村人全員が、近所はどんな人たちが暮らし、どんな生活をしているかを把握していて、みんなで助け合って生きているんです」
映画『三丁目の夕日』のような世界が、現在のアフリカには脈々と生き続けているのだ。
「今はほとんどなくなってしまった昭和の下町文化めいたものが、アフリカではまだ生きている。
『ちょっと調味料貸して』というような習慣が今も続いていて、それを借りに来た人が家に上がり込んで、ご飯までご馳走になる(笑)。
何かあると、大勢が誰かの家に集まってワイワイやる。
日本では、家はプライベートな空間だけど、アフリカではみんなの空間なんです」
将来は秘密基地っぽい家に住みたい!
子どもの頃は、東京の下町で団地住まいだったというヨシダさん。
お隣さんの家によく上がり込んで遊んでもらったりしたが、その一方でひとり暮らしに憧れていたという。
「居間の片隅にあった丸椅子をテーブル代わりにしてお絵描きして遊んだり、自分の部屋がなかったのでひとり暮らしにはすごく憧れてました。
ただ、昔の私は引きこもりで……。
ところが21歳のとき、突然引っ越ししよう!と思い立って、実際やってみると性格が180度変わった。
“明るい引きこもり”になったんです(笑)」
初めてのひとり暮らしは、代々木のメゾネットタイプだった。
「絶対に代々木に住む!と決めてました。
私のすべての行動範囲が、代々木から電車一本で行ける場所にあるので。
玄関のある1階を寝室にして、地下にキッチンなどの水回りがあって、“秘密基地感”のある部屋でした。
天井が高く全面窓だったので、明るくて開放的。
家で過ごす時間が楽しくて、また引っこもっちゃいました(笑)」
ロンドン在住のデザイナーが、古着を素材に、手作業でつくる一点物だ。タグにはおのおののキャラクターのストーリーが、手書きで記されている。
「私の人形には『ラスベガスですべてを失った』と書かれてました(笑)。
かわいいキャラもあるのに、私はなぜか“やさぐれ系” のぬいぐるみを買ってしまう。『飲むこと以外、楽しみなんてねぇ!』とか」(苦笑)
「住む場所が最優先ですね。その土地が持つ雰囲気というか、光の入り方や空気の流れとかを気にしますね。
風水までいかなくて、感覚的なものですけど」
こうした感覚を大事にしてきたからこそ、想定外の危険もあるアフリカで活動できるのだろう。
そんなヨシダさんは、将来どんな家に住みたいのだろうか?
「将来住みたいのは、秘密基地っぽい家。
中二階があって一部が半地下だったり、小部屋がたくさんあったり……外に出なくても、楽しめるような家がいい。
メインの部屋に大きな窓があって、無機質なのが好きなのでコンクリ打ち放しで、ちょっと薄汚れているくらいのほうが好み。
シンプルな中に無垢さが感じられるのが大好きなんです。
どこの高架下だよ?っていうくらい、むき出しで汚いほうがいいですね(苦笑)」
ヨシダ ナギさん 1986年生まれ、フォトグラファー。 幼少期からアフリカ人に憧れ、「大きくなったら彼らのような姿になれる」と信じてきたが、10歳で日本人である事実を両親から突きつけられ挫折。その後、独学で写真を学び、2009 年にアフリカに渡航。以来、少数民族を撮影している。近著に写真集『SURI COLLECTION』(いろは出版)など
撮影 林 紘輝(扶桑社)