自然豊かな雑木林を見下ろす約106坪の傾斜地に建てられた、建築家・平真知子さんとドッグトレーナーの夫の家。玄関・室内間は床がフラットにつながり、イヌも夫妻も移動しやすい仕様です。夫妻とワンコ、さらに2羽のインコが仲良く暮らす憩いの空間をご紹介します。
時間帯に合わせ、1日中快適でいられる六角形の住まい
それまで集合住宅住まいだった夫妻が見つけた物件は、雑木林が眼下に広がる傾斜地。ドッグランもOKの余裕ある敷地に、地上2階&地下1階の家を建築しました。
すべての画像を見る(全18枚)設計はもちろん建築家である妻。「採光と眺めを最大限得られるよう、六角形の家をプラン。1階は吹き抜けのダイニングを中心に配置し、その周りを生活空間やイヌのスペースが取り囲むデザインです」と妻。
平さん夫婦の愛犬は、ピークという名のゴールデンレトリーバー(オス・2歳)。新居完成のタイミングで迎えた、念願の大型犬です。
ピークの基本的な居場所は日当たりのいい南側。掃除のしやすいタイル敷きで、扉は必要に応じて開閉します。開口部は引き違い窓で、直接外に出られて便利!
ダイニングと周囲の部屋との間には扉がなく、ピークは移動が自在。「イヌができるだけ広い空間で過ごせるよう配慮しました」(妻)。
ピークの居場所からダイニングを横切ると玄関です。東側の玄関にはお散歩グッズを置き、こちらからも出入りOK。置き家具は最小限とし、ピークが動き回ってもぶつからないようにしています。
タイル敷きの床はひんやりとして、暑い季節は「避暑地」として活躍!
ピークの居場所の隣の窪みを利用したのがキッチン。
壁に沿った扇型で、手が届きやすく使いやすそう。
「ピークのご飯をつくり始めると、ピークが一歩ずつにじり寄ってきて、よだれをポトッと垂らします(笑)」(妻)。
リビングにはインコが!空間に放つ「放鳥」が日課!
南西側の部屋はリビング。キッチン、ダイニングとひとつながりで動線が快適そう。
そのリビングの主が、セキセイインコのプルプル(5歳)とポン(3歳)。
インコたちは夫妻が以前から飼っていた、いわばピークの先輩です。
「インコも家族の近くが好きなので、鳥カゴをリビングに置くようにしました」(妻)。
インコは1羽1つずつのカゴですが、カゴの手前部分で連結させ、自由に行き来できる工夫をしています。
「DIYでつなぎました。運動量も増えていいようです」(夫)。
地震対策のロープも止まり木として活躍!
インコの適度な運動のため、1日1~2時間「放鳥」を行っています。
「ピークの部屋や眺めの部屋などのスクリーンを下げ、目の届く範囲で放ちます。スクリーンはピークのちょっかい防止の目的も」と妻は話します。
一方、北側は階段室で、壁面に沿って大容量の書棚を設置。踏み板に腰かけながら読書でき、書斎としても機能します。
「ピークは大型犬なので隙間から落下しませんが、転げ落ちないよう踊り場を広く取り、さらに安全策として途中で折れ曲がる設計にしました」(妻)。
2階はドーナツ状のワンルーム。愛犬と楽しくかくれんぼも!
2階は、中央の吹き抜け部分を囲むドーナツ状のワンルーム空間。寝室、水回り、室内物干し、休憩室兼ゲストルームで成り立っています。
「ワンルームでぐるりと1周できる間取り。吹き抜けとの間は3面が壁なので、ピークが退屈気味のときはかくれんぼのように遊び、いい刺激になっているようです」(妻)。
外観はこのとおり。地上1~2階は木造、地下1階はRC造の混構造で、地下部分は夫の仕事場になっています。
大開口の前の広いデッキスペースは、ピークと体を使って遊ぶのにぴったりな場所。
ここから雑木林を下り、1日2回、それぞれ1時間程度の散歩をするのが日課です。大型犬の足腰を鍛えるには坂道が最適で、勾配のきつい斜面のロケーションが大いに役立っています。
散歩は、体力のある夫が担当しています。「ピークには恵まれた住まいなどの環境のもと、気持ちよく過ごしてほしいですね」(夫)。
自然に囲まれたロケーションに多角形を配置し、間仕切りを最小限とすることで、ハッピーで健康的な暮らしを獲得した平さん夫妻とペットたちです。
設計/平真知子一級建築事務所
撮影/飯貝拓司
※情報は「住まいの設計2017年5-6月号」取材時のものです