●自立を決めてから生活も変化。まさかの別居に

料理の前で読書
ひとり時間にたくさん読書をするようになったというあんさん
すべての画像を見る(全4枚) 朝井

:それまで家族のためにだけ使っていた時間を、少し自分のために使ってみる、という感じでしょうか。

あん

:そうそう、そういうことです。あとは、カフェに行っていろいろな作家さんの小説やエッセイをたくさん読みましたね。ロールモデルを探すためでもありましたし、私が今この文章を読んで惹かれているのはなぜだろう、と考えてもみました。これ、「メタ認知」と言って、自分がやっていることを客観視して、自分がどう思っているかを認識するんです。

朝井

:それ自然とやっていましたが、繰り返すことで自分の好きなものがはっきりしたり、快・不快の感覚が鋭くなったりする気がします。

あん

:そうそう。なにかを食べて「おいしいなー」と思ったら、もう一人の自分が「私はこういうものにおいしさを感じるんだな」と認識する。温泉に行って、「ああ、お湯が気持ちいい」と感じるだけでなく、「お風呂に入ると心がこんなふうになるんだな」とさらに深堀りするとか。

朝井

:そういうのって、日々忙しく生きるのに必死だと、スルーしてしまいがちですよね。

あん

:とくに私が長年主婦をやっていて思ったのは、家族のために生きていると、自分のことがよくわからなくなるんです。夕飯の支度にしても、子どもや夫の好きなものを作るわけで、自分の好きなものを入れることはほとんどありませんでした。自分の感情にどんどんフタをして、だんだん自分はなにが好きで、「好き」という感情がどういう感情だったのかもわからなくなっていって。

朝井

:自分のことを考える隙間が一切なかったんですね。

あん

:そうです。ひとつひとつは細かいことでも、それが積み重なることによって、なにに喜びを感じて、怒りを感じて、悲しみを感じていたのか、本当にわからなくなります。

朝井

:先ほど、40歳くらいのときに「このままではいけない」とふと思った、とおっしゃっていましたが、もしかしたら、そういった積み重ねで無意識にそう思うようになったのかもしれないですね。

あん

:そうかもしれません。その後、45歳で働いてみることにして、そうこうしているうちに夫との関係性が悪くなって別居。そこから本格的に自立することになります。
おもしろいのが、別居したから自立したわけではなく、自立しようと少しずつ動いていた途中でたまたま別居することになったんですよね。

――結婚22年目にして別居を選んだあんさん。これから後悔しない60代を迎えるため、ひとり時間をどんどん充実させているようです。


【中道あん】

1963年、大阪府生まれ。26歳で結婚し、2男1女を授かる。家事と育児、お小遣い稼ぎの仕事とママ友ライフを幸せに送るが、やがて子供の成長とともに自分自身の将来に目を向けるようになり、正社員として働き始める。結婚22年で夫と別居。2019年正社員からフリーランスに転身。3歳になるイングリッシュコッカースパニエルと日々の暮らしを楽しんでいる。ブログ「

女性の生き方ブログ! 50代を丁寧に生きる、あんさん流」主宰。著書に『50代、もう一度「ひとり時間」

』(三笠書房)がある

【朝井麻由美】

フリーライター・コラムニスト。著書に『

ソロ活女子のススメ』(大和書房)、『「ぼっち」の歩き方』(PHP研究所)、『ひとりっ子の頭ん中』(KADOKAWA)。「二軒目どうする?」(テレビ東京系)準レギュラー出演中。ひとりでの行動を「ソロ活」と称し、ひとりスイカ割り、ひとりバーベキュー、ひとり流しそうめん、ひとりナイトプールなど様々なことをひとりで楽しむ。趣味は食べ歩きとゲーム。twitterは@moyomoyomoyo