持続可能な社会をつくるための「SDGs」という言葉が注目されています。一見難しそうに感じますが、じつは私たちの暮らしのなかに取り入れられることがたくさんあります。
SDGsに詳しいフジテレビの木幡美子さんに、身近にできる工夫についてつづってもらいました。

捨てられたおにぎり
食品ロスをなくそう
すべての画像を見る(全7枚)

食品ロスをなくそう。まずは買いすぎないところから

最近、ちょっとうれしくなったことがあります。それはサッポロビールが、新商品「LAGER」のスペルを誤って「LAGAR」と表記してしまい、発売延期を発表したところ、消費者などから「もったいない」との声が寄せられ、一転して販売することを決めたというニュース。

これを聞いたとき、私も「えっ、スペルミスのビールはどうするの? 全部捨てちゃうの?」と思っていたら、同じような意見がたくさん寄せられたそうです。「EじゃなくてもA(ええ)じゃないか」というシャレの効いたハッシュタグが拡散され、この動きを受けてサッポロビールは、やはり販売することを決めたそうです。もし10年前に同じことがあったら、果たしてこうなっていたでしょうか? やはり最近の食品ロスに対する問題意識が影響していると思います。

ゴミ箱に野菜
「フューチャーランナーズ」 2019年4月10日放送 フードエコロジーセンターより

環境省によると、日本の食品廃棄物等は年間約2550万トン。このうち、まだ食べられるのに廃棄される食品、いわゆる「食品ロス」は約612万トンと推計されています。そして、それを処理する際に温室効果ガスを出すだけではなく、それに私たちの税金8000億円~1兆円(!)が使われているんです。

●世界では9人に1人が飢えに苦しんでいる

さらに、世界に目を転じると、食料生産量の3分の1にあたる約13億トンの食糧が捨てられている一方で、9人に1人は飢えに苦しんでいます。う~ん、なんかおかしいですよね? SDGsは、目標12で、「一人あたりの食品廃棄を半分に減らすよう、人も企業も取り組みましょう」と掲げています。

そう言いつつ、冷蔵庫の奥から、原形をとどめない“白骨化”した食べ物を発見することがよくある私。きっとこの記事を読んでくださっている皆さんは、もっと上手に、食材を食べきる工夫、残り野菜を使ったお料理などで、うまくやりくりしていると思います。ESSEでもそういった特集が組まれていますものね!

●賞味期限への考え方の違い

日本には、「安全に食べられる」消費期限と、「品質が変わらずおいしく食べられる」賞味期限があります。
お弁当、ケーキやサンドイッチなど腐りやすいものには消費期限、スナック菓子やカップ麺などには賞味期限が記載されています。子どもの頃に住んでいたアメリカでは、もっとさまざまな表記があったと記憶しています。自己責任の国らしい、BEST BY~とか、BEST BEFORE~などをよく目にします。

アメリカの賞味期限表示例
アメリカの賞味期限表示例

BEST BY~は「~までに食べればベスト!」という感じ。そこには、「確かにそれがベストだけど、多少過ぎても、自分で判断してねー」というニュアンスが含まれているように思います。確かに買ったあとの保存の仕方によっては、一概には言えないでしょうから、あとは自分の鼻と舌、経験値を信じるのがいちばんなのかもしれません。私はそっち派です。

卵パック
アメリカでは、1月31日購入の卵の期限は3月12日と長い!

じつは食品廃棄物のなかでも家庭から出る食品ロスの量は、全体のほぼ半分の約280万トン。これは、ゴミと一緒に出されてしまうので、リサイクルに活用されることはありません。なので、ぜひこの食品ロス削減のために「もったいない」意識をより一層強くし、できることから始めてほしいです。

【皆さんにもできること~食べ物編~】

・買いすぎない
 買い物に行く前に冷蔵庫をチェック! 空腹で行くと危険!
・上手に保存
・外食やテイクアウトの際、注文しすぎない
・食べ物を残さない、食べきる!
・食品を買うとき、なるべく手前からとる(奥の期限が長いものを選ばない、すぐ食べる場合とくに)
・賞味期限・消費期限のちがいを知る
・食べきれない缶詰、飲料、フリーズドライ商品は、フードバンクへ寄付 ※日本でも広がってきていますので、フードバンクで検索してみて下さい
・冷蔵庫内で早めに食べた方がいいものは見やすい位置に

●フードシェアリングアプリも登場

こんなアプリもあるんです。その名もTABETE(たべて)。

スマホアプリ画面

SDGsをテーマにした番組「

フューチャーランナーズ

」でも紹介したTABETEは、まだおいしく安全に食べられるのに、店頭では売りきるのが難しい食べ物をお得に買えるフードシェアリングアプリです。私も使っていますが、近くで「レスキュー」を求めている食べ物を、私が助けるというアプローチがいい。

袋を持つ女性

もし食べ物がしゃべれたら「助けて! まだ食べられるよー」そんな声を発信するアプリ。開発した川越さんは、「お得に買えた! というだけではなく、ちょっといいことしたかも、と思ってもらえたら」と話しています。

袋にたくさんのパン
この日は、1100円のパンセットを680円でレスキュー

売る側も買う側もハッピーになり、しかも環境にもやさしい。こういった捨てない仕組みを考える人がたくさん出てきているのはうれしい限りです。

●常に商品があることを期待しすぎないで

最後に、いつお店に行っても商品が陳列棚に並んでいることを期待する消費者は多いと思います。でも、ときとして品ぎれになってしまうこともある。それを「あ、全部売れてよかったね」 「捨てないですんだね」と気持ちをきり替え、今度はもっと早く買いに行こう思ってもらいたいのです。

いつでも希望の商品があったらという消費者の欲求が、「たくさんつくる」ことにつながっています。大量生産、大量廃棄ではなく、食べられるうちに必要な人に届けたり、そもそも捨てないしくみを考えることが、結果として地球環境にもプラスになる。
家庭で重要な役目を果たしている女性は、かなりパワフルな“食のレスキュー隊”になれるはず。
もしまだやっていないことがあったら、今日から始めてみましょう!

【フジテレビ『フューチャーランナーズ』放送中】

SDGsを推進するため、ゴールに向かって奮闘している人たちを取り上げる番組。
毎週水曜22:54~23:00放送(関東ローカル)

公式サイト

ですべての放送回を見ることができます。