警視庁の発表によると、2020年11月の自殺者は1798人と前年同月比11%増に。
とくに注目されているのが、女性の自殺者数の増加です。2020年10月は82.6%増と、ショッキングな数値になっています。
詳細は公表されていませんが、このコロナ禍で精神的にも経済的にも追い詰められてしまったのが大きな原因と考えられています。

「メンタルコーチとして活動してきたこの10年間、クライアントさんの8割強が女性でした」と語るのは、うつ専門メンタルコーチの川本義巳さん。
じつは多い女性のうつ病について、教えてもらいました。

悩む女性
じつは多い女性のうつ病
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じつは多い女性のうつ病。リスクを減らすヒントになる、アドラー心理学の「幸福の三原則」

厚生労働省でも数年前から自殺対策のプロジェクトが進められていますが、うつ病が対策の中核になっています。じつは男女のうつ病発症率は4:6の割合で女性の方が多いです。
しかも妊娠中や産後のうつ発症率は3人に1人と、驚くような結果が出ています。

●心の不調の原因は人それぞれ

私がメンタルコーチとして活動してきたこの10年間で、担当させていただいたクライアントさんの8割強が女性でした。
年代は10代~60代。職業も学生、会社員、看護師、保育士、教師、主婦とさまざまな経歴の方がいらっしゃいました。

心の不調になった原因もそれぞれです。勉強の悩みや友人関係のトラブル、職場の人間関係、出産に対する不安、子育てに対する悩み、姑さんとの関係、職場での立ち位置(キャリア形成等)、ママ友問題、夫婦関係、空の巣症候群、その他女性特有の身体的な悩み(生理、更年期等)などなど…。

いろいろな悩みを聞かせていただくなかで、ある共通した課題を見つけました。それは、「女性は男性に比較して、自分の意志に関わらず生活環境が変化しやすい」ということでした。

●女性は生活環境が変化しやすい

たとえば、結婚で姓が変わるというのも大きな変化ですし、妊娠・出産・子育てというのもこれまでとはまったく違う日常になっていきます。人によっては、夫の転勤に伴う引っ越しで、新しい環境に行かざるをえない人もいらっしゃるでしょう。
環境の変化はうつの発症条件でもあります。このように、男性に比べて、生活環境の変化が起こりやすい女性にうつが多いのはうなずけるところです。

では、どうすれば女性がうつになるリスクを減らすことができるのでしょうか?
私はその方法としてアドラー心理学の「幸福の三原則」をオススメしています。

●アドラー心理学の「幸福の三原則」とは

幸福の三原則とは、「人間はこの3つがあれば幸福でいられる」というものです。
その3つとは以下です。

・自己受容(ありのままの自分を受け入れている) ・他者信頼(他人は信頼できる存在である) ・社会貢献(周りに貢献できている)

じつはうつの人の多くが、この3つとは真逆の状態になっています。
まず自分のことがあまり好きではありませんし、自己否定をしてしまっています。
他人に対しては恐怖心を抱いていたり、「申し訳ない」と思っていたり、怒りを覚えていたりしています。周りに対しても「役に立ててない」と感じています。
うつの人も元々そういうことではなかったのですが、いつの間にかこういう状態に陥っているというのが現実です。なので、この3つを変えることで状況を変えることができます。

●まずは社会貢献から始めてみる

ただ、「3つを変えろと言われても具体的にどうすればいいのかわからない」と思います。
そこで私がオススメしているのが「社会貢献から始める」という方法です。

「社会貢献」といってもそんな大げさなものではありません。身近な人に自分のできる範囲内で貢献をする、で大丈夫です。私は「新聞をヒモで束ねる」ということが最初でした。

貢献すれば、相手に信頼してもらえます。ここで「他者信頼」が生まれます。そして「ありがとう」と感謝されることで、自分のことがちょっと好きになれます。そうなると少しずつ「自己受容」できるようになっていきます。この循環がうつを防いだり、落ち込んでいる状態から回復する手助けになっていくわけです。

●「ありがとう」はだれにでもできる簡単な貢献

「自分はメンタルが大丈夫だから関係ない」…そう思う方はぜひ、だれかが自分になにかをしてくれたときに一言「ありがとう」と感謝を伝えるようにしてみてください。そうすることで、相手の方に「幸福の三原則」が生まれます。
「ありがとう」はだれにでもできる簡単な貢献だと思います。社会が「ありがとう」で包まれるようになったら、うつは減っていくと思いませんか?