旬の素材を使った毎日の料理や、時季ならではのおいしい食べ方をつぶやくツイッターアカウント、「きょうの140字ごはん」(
@140words_recipe)を運営する文筆家の寿木(すずき)けいさん。
使いたいと思う食材や道具、そしてだれかへの贈り物は、四季に導かれるものだそう。
寿木さんから季節のあいさつに代えて、読者の皆さんへ「今日はこれを手に取ってみませんか?」とお誘いします。
普段なに気なく飲むものは、人によってお茶だったり、コーヒーだったりと違いがあるのかもしれません。
寿木さんにとって欠かせない、「毎日の飲み物」について教えてもらいました。
お茶でもコーヒーでもなく、炭酸水が好き。欠かせない「毎日の飲み物」
炭酸水が好きで、気に入ったものを2種類常備している。
ひとつめは「
」。福島県奥会津金山町では、低い温度で湧き出す冷鉱水を源泉とした軟水(平均硬度は45)かつ微炭酸の天然水が採れる。口当たりがやわらかくて、和食中心の家の食事にもよく合う。
すべての画像を見る(全5枚)お酒を飲む際のチェイサーにもぴったりだ。繊細なワインや日本酒の香りを中断しすぎることなく、口の中をさっぱり洗い流してくれる。
●ただものではない、ただの炭酸水
一方、パルシステムで箱買いしているのが、「
ただの炭酸水」。福岡県朝倉市にある工場で、甘木の深井戸水を使って1997年から生産されているロングセラー商品だ。ミネラルも味もなにも加えていない水に、炭酸ガスを加えてつくられている。
「奥会津金山 天然炭酸の水」に比べると、炭酸がきいていて、喉がギュウーっと鳴る。
最初は、200mlという量がグラス一杯のハイボールをつくるのにちょうどよくて買い始めたのだった。でも、そのまま飲んでもおいしくて、欠かさずに買うようになった。夏はうんと冷たくして、冬は常温で。運動したあとや、昼間自宅で仕事をしているときのリフレッシュにいい。
●京都で出合った「うね乃」のだし
ちょっと変わったところでいうと、料理用のだしをお茶のように飲んでいる。
2年前、京都に住む友人に連れて行ってもらったうどん屋「仁王門 うね乃」でおいしいだしを知った。出されたうどんのスープを一滴残さず飲み干してしまっほどで、お土産用のだしパック「じん」をいくつか買って帰った。最近では近所のスーパーにも並ぶようになったので、いつでも買いたすことができて助かっている。
最初はもちろん料理用に買っていたのだけれど、そのうちマグカップで飲むようになった。こんなにおいしいんだから、そのまま飲んじゃえというわけだ。朝、子どもたちを送り出したあと、400~500mlのだしを沸かし、保温ポットに入れて仕事部屋へもっていく。
私の場合、カフェインが入っているお茶やコーヒーを飲み過ぎると、それがないと仕事のスイッチが入らなくなったり、眠気覚ましのために摂取してしまったりする。そんな風にして食べ物に依存してしまうと、自分以外のものに運転席に座られている感じがしてしまう。
でもだしなら、そんな心配がない。マグカップ2杯ぶん程度を飲んだら、すっかり満足してしまうし、胃がきゅっと締めつけられるようこともない。
食べすぎた日の翌朝は、朝ごはんを食べずに、このだしをたっぷり飲むだけで済ませることもある。午前中にたくさん考えごとをしたい日にも、この方法はおすすめだ。頭が軽い。
最後にひとつ。
毎日飲み続けている水といえば、水道水がある。
夏のぬるい水を、ぽってりとした瀬戸物の湯呑みに汲んで飲むときの、体に水が染み込んでいくようなやわらかさ。
指が切れそうなほど冷たい冬の水を、薄いグラスにたっぷり注いで口をつけるときの、体の芯から起動していく感じ。
水道の水だって、季節によって温度も味も違う。グラスや茶碗を変えてみるだけで、味わいもぐんと違ってくるのだ。毎朝水道水をどんな風に感じるか、自分の体と対話するように飲んでみるのもおもしろい。
【寿木けい(すずきけい)】
富山県出身。文筆家、家庭料理人。著書に『
いつものごはんは、きほんの10品あればいい』(小学館刊)、『閨と厨』(CCCメディアハウス刊)など。最新刊は、新装刊『わたしのごちそう365 レシピとよぶほどのものでもない』(河出書房新社刊)。趣味は読書。好物はカキとマティーニ。 ツイッター:きょうの140字ごはん(@140words_recipe) ウェブサイト:keisuzuki.info