ペットの柴犬の写真をツイッターに投稿し続け、その自然体のかわいさが人気となっている
@inubot。ESSEonlineでは、飼い主で写真家の北田瑞絵さんが、「犬」と家族の日々をつづっていきます。
第25回は、7月の四連休に川に遊びに行ったときのお話。
貸しきりの川で水遊び。犬選手は余裕の泳ぎっぷり
都心の車のナンバーやさまざまな年代が集ったキャンプ場を傍目に道を進んでいくと、人がいなくて貸しきりの川がある。
すべての画像を見る(全15枚)7月23日、四連休初日。四日間の天気予報はズラリと傘マークが連なるが、23日起床した段階ではまだ曇天で、蒸し暑かった。ほな9時半に出発ということで…母と交わしていたら出かける雰囲気を察したのだろうか、犬が爛々と目を輝かし始めた。
おやつ、水…バスタオルもいるかと犬のおでかけセットを準備していたら庭から視線を感じ、振り向くと「まだかい」と急かされているような気がした。
目的地である村は避暑地として例年他府県から訪れる人も多い。キャンプ場やバーベキュースペースがある一方で、広大な自然の中には静かな穴場もあって、人目を憚らず犬と川遊びをするのにうってつけなのだ。
母に運転をしてもらいながら辿り着くと、エメラルドグリーンの澄んだ川が流れていた。水が流動する様子がどくどくと脈を打っている一体の生き物のようだった。
1年ぶりになるけど泳げるかなー? なんて心配は無用であるともうわかっている、陸地と川の境界を感じさせない足取りでちゃぷと音を立てれば足がつかなくなったところで泳ぎ始めた。
「見てみ、掻く力すごいな~!」目尻を下げて母が笑った。自転車の乗り方を身体が覚えているのと同じようなものなのか、犬選手は余裕の泳ぎっぷりだ。
「やっぱり運動不足やったんかな」犬ちゃんは…と呟く母の目線の先で、梅雨の間に持て余した体力を放出するかのように、水が流れる向きに逆らって手足を掻いて前進していた。
川から上がってきたところに近寄ったのが迂闊で、ブルルルッと濡れた体を回転して弾けた水飛沫を顔面とカメラに浴びた。
流れに立ち向かったり、なだらかな円をえがいて回転したり、流れる水に送られるように“す、”と身を委ねて下ったり、ゆれるエメラルドグリーンに意思をもって浮かぶゴールドが映えている。
普段は手足をふくふくと覆っている毛並みが濡れていて、見慣れない原形になんだか胸がくすぐられるような可笑しみがあった。
帰り道ではすっかり泳ぎ疲れたのか私の膝の上で丸くなって眠っていた。普段ボール遊びとかではやらないけど、プールとか川とか水場で遊んだあとは体をべったりくっつけて眠るのはなんなん、クセか。
帰ってきてからシャンプーとドライヤーもしっかりしたからか、次の日もお腹を下したりしなくて安心した。ドライヤーを終えれば再びいびきをかいて眠りに落ちた。
まだ17時で、外は真昼と変わらぬ明るさだったが地面を叩く雨の音が聞こえる。天気予報が当たるなら「四連休これが最後の大雨です」と言っていた天気予報士の言葉まで当たるといい。
この連載が本
『inubot回覧板』(扶桑社刊)になりました。第1回~12回までの連載に加え、書籍オリジナルのコラムや写真も多数掲載。ぜひご覧ください。
【写真・文/北田瑞絵】
1991年和歌山生まれ。バンタンデザイン研究所大阪校フォトグラファー専攻卒業。「一枚皮だからな、我々は。」で、塩竈フォトフェスティバル大賞を受賞。愛犬の写真を投稿するアカウント
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