テレビのニュースやゴシップに腹を立てて罵倒している人、周りにいませんか? そのような暴言は聞いているだけで気が滅入ってきますよね。

漫画家、エッセイストの瀧波ユカリさんに、読者から実際に寄せられたお悩みをズバリ解決してもらいました。

怒りやすい父…満たされない承認欲求が「当たり屋」のように怒る原因かもしれません

【お悩み】実家の父が怒りやすくて困っています

父に叱られる女性のイラスト
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父は以前から怒りっぽい性格でしたが、58歳のときに病を患い、会社を早期退職してひどくなったように感じます。怒りの対象は近所の人やテレビのニュースなどさまざま。「クズだ」「死ね」などの暴言は、聞いているだけで心がすさむし、息子たちにも聞かせたくありません。

実家で暮らす母、祖母、兄は「なにを言っても仕方がない」と、父の暴言を無視していますが、私としては、できるだけこの状況を変えたいと思っています…。(愛知県・33歳)

【瀧波さんからのアドバイス】全身運動できる趣味がおすすめ。でも、根本的には本人の問題

お父さまが怒る理由、すごくわかります! だって若い頃の私とそっくりだから。

フリーター時代の私は、とにかくいろんなことに腹を立てていました。役所の窓口、政治のニュース、有名人の発言、満員電車で寄りかかってくる人…今も同じことでイラついたりするけど、当時はもっと爆発するような怒りを感じていたし、相手に敵意をむき出しにすることもありました。

あの頃の私は肩書きも活躍の場もなく、だれにも興味をもたれることのない存在でした。自分はほかの人より劣った存在なのではという不安と、本当の自分を評価しない世界への怒り。そのふたつの感情に苦しんでいました。

・「他人の落ち度」は感情をぶつけるのに最適

そんな感情をぶつけるのにうってつけだったのが「他人の落ち度」。わかりやすい落ち度に腹を立てて指摘することで怒りを発散し、「こんな人よりも自分の方が優れている」と思うことで、不安を解消していたのです。ほとんど「当たり屋」と変わりませんよね。

でもそれから漫画を投稿してデビューして、私生活でも家族ができて…と状況が変わっていったことで、私のなかの当たり屋はいつしか消滅しました。病で早期退職を余儀なくされ、健康と肩書きを同時に失ったお父さまも、きっと当時の私と同様の感情を抱えているのではないでしょうか。

「私にできるのはここまで!!」イラスト

自分はもうなに者でもないのでは? という不安。世界から評価してもらえない怒り。それらがお父さまを当たり屋にしているのだと思います。

・「脱・当たり屋」するためには?

では、どうしたら「脱・当たり屋」できるのか? 退職後の男性への提案としては月並みですが、趣味に取り組むのがいいのかなと思います。なにかしら目標に向かって挑戦すれば、達成感を得たり承認欲求を満たすことができるからです。

60代であれば、頭や手先を使うことよりも、全身運動の方が向上が望めそうです。たとえば登山やマラソン。スローペースでもゴールすることで達成感が味わえます。遠出するのが難しければ、ジムでのトレーニングでもいいと思います。

そういった趣味をすすめてみて、もし興味をもつようであれば情報提供したり、一緒にやってみるのはいかがでしょうか。お子さんがもう少し大きくなれば、一緒に楽しむこともできますしね。

でもお父さまが興味をもたないようであれば仕方がないです。そうなったら、心から嫌いになる前に距離をおくのもひとつの手。罪悪感をもつ必要はありません。どんな態度で生きるかは、根本的にはお父さまご自身の問題なのですから。