健康にいい油として、一時はスーパーの棚から品ぎれが続くほどのブームとなったアマニ油やエゴマ油。
「1日スプーン1杯で『オメガ3脂肪酸』が摂れ、がん予防や花粉症軽減、認知症予防や腸活に効果が見込めます」というのは、エゴマ油を研究している富山大学の渡辺志朗准教授。
油を替えるだけで健康になれるというのは魅力的ですが、どういう効果があって、どのように摂取すればよいのでしょうか。詳しく伺いました。

アマニとえごまをスプーンですくう
油でオメガ3脂肪酸を取り入れましょう
すべての画像を見る(全3枚)

日本人の食生活が変わり、青魚から摂れていたオメガ3系脂肪酸が不足していた

健康維持をサポートしてくれるというオメガ3脂肪酸。
「オメガ3系脂肪酸のなかでも『α-リノレン酸』は、人の体内でつくることができない、必須脂肪酸のひとつです。子どもやシニア世代にはもちろん、子どもを持つママ世代にも、その必要性を意識しながら積極的に取り入れてほしいですね」(渡辺准教授)

まずはα-リノレン酸の脳を育てる効果と、血液ドロドロ改善効果について聞きました。

●子どもの脳を育て、大人の脳を守る

脳の6割は脂質です。青魚に含まれる「DHA」や「EPA」は、受験生に人気のサプリとしてもおなじみですが、なかでもDHAは脳の神経組織の発育、機能維持には欠かせない成分。

「植物性オメガ3脂肪酸であるα-リノレン酸を積極的に摂取することで、体内でDHAやEPAへと変換されます。勉強に励む子どもだけでなく、頭脳労働をしているサラリーマンにもおすすめ。また加齢期の脳は、ブドウ糖をエネルギーに変換する力が弱まり、エネルギー欠乏状態になることが、脳の衰退の原因に。α-リノレン酸は加齢期の脳の認知機能の維持、回復を助ける効果も期待できます」(渡辺准教授)

●ドロドロの血液からの脱出

器にアマニとえごま

血液検査の結果が気になっている人にもぜひチェックしてほしい情報が。

「善玉コレステロールが少なく、悪玉コレステロールが多い、もしくは中性脂肪が多い場合は、いわゆる“血液がドロドロ”と言われる状態になっているかもしれません。脳疾患、心疾患のリスクが高まるため、早期改善が必要です。この血液がドロドロした状態にもオメガ3脂肪酸(α-リノレン酸)が有効であると知られています」(渡辺准教授)

日本人は、昔は青魚からたっぷりオメガ3を摂取できていたものの、食生活の欧米化が進んだ現代では、バランスにも乱れが出てきているそう。

オメガ3系オイル、アマニ油・エゴマ油の違いって?

厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2015年版)」によりば、オメガ3脂肪酸の1日の目標にしたい目安量は1.6~2.4gとされています。これは、アマニ油・エゴマ油は、いずれもティースプーン1杯程度の量でクリアすることができます。

しかし、「実際はもう少し多く食べたほうがいいんですよ。油ですので、カロリーが気になるという問題こそありますが、摂り過ぎのデメリットもとくにありません」と、渡辺准教授。今回は、アマニ油とエゴマ油の特徴や効果的な使い方についても詳しく聞いてみました。

●がん予防にも!炒めものにも使えるアマニ油

亜麻の種子からつくられるアマニ油。水溶性と不溶性の食物繊維をバランスよく含んでいるため、美容の面でもうれしいですね。

1990年には、アメリカの国立がん研究所が、アマニをがん抑制食品のひとつとして挙げていることにも注目です。

「オメガ3を含んだ油は酸化しやすく加熱できないと言われることが多いのですが、アマニ油の場合、炒め物程度の短時間の過熱であればほぼ変質しないことがわかっています。日々使う炒め物の油をアマニ油に変えるだけでも、オメガバランス改善の第一歩になると思います」(渡辺准教授)

ただ揚げ物などの高温調理の場合は酸化によってにおいが出やすいのであまり向いていません。

●花粉症やアレルギーに効果あり!エゴマ油は長寿の薬

シソ科の一年草エゴマの種子を搾ってとってつくられるエゴマ油。東北地方では、「じゅうねん」といって長寿の野菜として知られていました。

「α-リノレン酸の量がアマニ油よりもやや多く、香りもマイルドでコクがあるのが特徴です。エゴマ油に含まれる『ロスマリン酸』には抗炎症作用、抗酸化作用があるので、花粉症などのアレルギー反応を抑える効果も期待できます」(渡辺准教授)

加熱せずに生でとるのがおすすめ。ドレッシングに使ったり、おみそ汁にチョイたしするのもいいでしょう。

最近は粉末状のアマニやエゴマ油をつかったマヨネーズなど、普段の食事に取り入れやすい商品も開発されています。少しずつ、毎日の健康習慣に取り入れてみてはいかがでしょうか。