2019年、にわかに話題となった「老後資金2000万円不足問題」。その報告書の中で、葬儀費用は約200万円とされています。
もともと高いイメージがつきものの葬儀ですが、じつは葬儀が終わってみると“いつの間に”高くなっていた、という声も多く聞かれます。中には費用が上がったことを共有しないまま進めてしまい家族間トラブルにつながるケースも。
そんな葬儀の追加費用をめぐるトラブルについて、葬儀関連サービス企業でPRを務める高田綾佳さんが、葬儀の現場でよく聞かれる声をもとに、千鶴さんという方のケースを例に紹介します。

電卓をたたく様子
予算を決めておかなかったために、葬儀代が膨れ上がりました(※写真はイメージです)
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弟が葬儀社からの営業を受け、葬儀を勝手にアップグレード。払えない額に…

千鶴さんは、都心部に住む50代の専業主婦。10年ほど前に母を亡くして独り身になった父の体調が思わしくないことを気にかけています。しかし夫の両親も最近弱ってきたことから「あまり実家のことに時間を使わないようにしよう」と考え、2才下の弟夫婦に世話を頼んでいました。

入院していた父が長くないことは分かっていたので、弟夫婦は複数の葬儀社に見積もりを依頼。父の人柄を反映したシンプルでこじんまりとしたお式にすることに決めました。

少しずつ準備していたある日、父の容体が急変。そのまま帰らぬ人となりました。最初は動揺した千鶴さんたちでしたが、すぐ気持ちを落ち着けて葬儀社に連絡。そのまま葬儀に向かって動き出すことになりました。

●金額が増えた見積書に、葬儀当日まで不安が募ります

葬儀にあたって千鶴さんたちは役割を分担し、葬儀社との打ち合わせは喪主も務める弟が、周囲への連絡は義妹が、弔問客の相手は千鶴さんが行うことにしました。

慌ただしく各自が役割をこなす中、千鶴さんは義妹に「お姉さん、これを見て」と見積書を見せられました。弟が葬儀社との話し合いで受け取った見積書の費用が、父の生前につくった見積書と比べ値上がりしているのです。

千鶴さんは弟に駆け寄り、「シンプルにしようと言っていたのに、当初の話と違う」と問い詰めましたが、弟はしどろもどろ。どうやら葬儀社の親身なアップグレード提案に折れてしまったようでした。

思えば昔から優柔不断だった弟に交渉を任せてしまったことを悔いた千鶴さん。急いで再見積もりの連絡をするも「既に発注済みなので変更には対応できない」と葬儀社に断られてしまい、千鶴さんと義妹は不安を抱きながら式に臨むことになりました。

棺のふたを持ち上げている様子
豪華なお葬式はだれのため?(※写真はイメージです)

当日会場に行ってみると、お花や棺の質が想定よりはるかに高く、相当きらびやかに仕上がっていました。実直で飾らない父の印象とかけ離れた式となり、不満を感じた千鶴さん。しかし「ここでケンカになっては父に申し訳ない」と必死に出棺までの時間を過ごしたのでした。

●請求書が届き、3人の兄弟で激しい口論に…!

葬儀終了後、葬儀社から受け取った請求書を3人で開くと、父の生前に確認した見積書の倍近い金額が記されていました。
弟夫婦は財産を持たない父の入院費や介護に関わる費用をすべて出していたので家にお金が残っておらず、千鶴さんも決して経済状況がいいとは言えません。3人のお金とお香典を合わせたとしても払いきれない金額になっているため、その場で口論が始まってしまいました。

とくに義妹は弟に対する日頃の不満も合わさり、「あなたはいつもそうやって無駄なお金をかけてばかり!」と激高し夫婦げんかに発展。支払い期日が迫ってもケンカが収まる様子は見えません。

葬儀をきっかけに家族関係が険悪になってしまい、父に対する申し訳なさと後味の悪さを感じる千鶴さんです。

さて、千鶴さんはどうすればよかったのでしょうか。ここから解決編になります。