SNSを使うのが一般的になった時代。自身の暮らしや考えをダイレクトに発信できる反面、使いこなすリテラシーも求められています。

初めての出産育児を男性目線でつづった出産・育児本『こうしておれは父になる(のか)』を出版した本人さん(@biftech)は、もとはライブやフェスをレポートするのが趣味のネットユーザーとして活動していました。

ここでは子育てをしながらSNSで発信することや、出産前後で変わったこと、感じたことについて伺いました。

本人さん
子どもができて、父親の意識はどう変わった?
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子どもをロックフェスに連れて行ったら、SNSで批判された

――本人さんはもともとライター業をやっていたり、Twitterでも発信力があったりと、自意識が強いタイプの方だったと思います。そういう自意識は、お子さんが生まれて変化がありましたか?

子どもが生まれたら、自分が主人公ではなくなって、子どもの人生を応援するようになるのかなと思っていたけれど、そんなことは全然ありませんでした。主権交代せず! です。今のところ、自分は自分であり続けています。

ただ、今までもライブやいろいろなカルチャーを見てきたように、ゼロから生まれて育つ命を至近距離で体験しているというか、対象が子どもに変わったという実感があります。自意識はそのままだけど、目線はだいぶ変わりましたね。

具体的に世の中が悪くなっていくようなニュースを見ると、以前は「自分がうまいことやっていられたらそれでいいや」くらいの気持ちでいたんですが、今は「自分が死んだあともずっといい世の中であってくれ」と求めちゃう。そういう不安は子ども産まれてから増えましたね。

――ちなみに今年の夏、野外ロックフェスにお子さんを連れていったそうですね。「危険だ、親のエゴに子どもをつき合わせるな」と、よく議論されるテーマです。
野外ロックフェスにお子さんを連れていった様子

それについて、SNSで直接的に批判されたりもしました。言いたくなる気持ちはわかります。

僕たちはベビーカーや雨具など装備を整え、医療テントや近隣の医療機関の位置を把握し、クルマとホテルを確保して…と、可能な限り準備してきました。そのうえで、たとえば今年のフジロックでは天気が崩れる前のお昼時に会場を出て、ホテルでYouTubeの中継を観るという動き方をしました。倍以上の準備と半分以下の行動量で余裕を確保し、常に子どもを見守るに徹しています。

ただ、だからといってSNSで指摘してきた人が「ならよし!」とはならないと思います。パチンコ屋の駐車場に子どもを置き去りにする親のように見られていたらさすがに否定したい気持ちもあるけれど、SNS上のやりとりに時間を費やすのではなく、その時間は会場で新しいものと触れ合って楽しそうにしている子どもを見守ることにあてたいと思っています。

――近年、妊娠、出産、育児にまつわるストレスが、SNSに吐き出されている傾向があるように感じます。

そう思います。たとえば妻の妊娠が発覚したあと、同じ月に出産予定の方のTwitterアカウントを片っ端からフォローしたんです。なんでもつぶやくのではなく、マタニティや育児の話題に特化したアカウントが多数あって、そこがある種「王様の耳はロバの耳」的な感じでモヤモヤを吐き出す先にもなっているなあと気づきました。

SNSでパパがけちょんけちょんに言われることは、同性としてバツが悪くもあるけど、吐き出す場所があること自体はいいことだと思います。妻を見ていても、どうしてもピリついてしまう時期があったし、ナーバスにならざるを得ない状況だから、仕方ないのかなと。そういうアカウントでも、実生活では夫婦で仲よくやっているという可能性も大いにあるでしょうし。

――ほかに本人さんが活用している情報源はありますか?

会社のSlack(オンラインコミュニケーションツール)に、「パパ雑談」みたいなチャンネルがあるんですよ。先週も「今ならH&Mのベビー服が3着目無料」みたいな情報を共有したり写真の見せ合いをしたりしていました。
勤めている会社がIT系なので、エンジニアの人たちは集合知で解決というか、育児に関しても技術でどんどん快適にしていくので、見ていて安心できます。

頼れるところに頼っていかないと、子育ては解決しない

――ベビーシッターなどの外注サービスは利用されますか?

キッズラインというサービスをよく使っていますね。僕たち夫婦はコンサートによく行くので、家で子どもを見てもらうというよりは、保育士さんと交渉して、「コンサートの間だけ近くのお店で子どもを見てほしい」みたいな使い方をしています。

また、託児所によってはライブカメラを設置していて、様子を確認できるところもあるんです。うちの夫婦はどちらの実家も遠方なので、そういうサービスはどんどん試しています。今どきはご近所づき合いも希薄ですし、頼れるところには頼っていかないと解決しないので。

――昔は、子育ては親戚やご近所ぐるみで行うものでしたが、今の時代は現実的に難しい。こういったサービスを外注することに罪悪感をもつ必要はないですよね。

そうなんです。前提として「自分たちでどうにかするしかねえ!」という思いがあります。そのうえで、各々の希望や条件をすりあわせていくというか。

だからこそ夫婦で要件定義をするようにしています。希望を書き出していって「ここはこうしよう」といったふうに合わせていきます。

――お話を伺っていると、だいぶロジカルだと感じます。

そうなんです、エモく生きてるつもりだったんですけど…(笑)。

――ネットやSNSでは、今の時代に子どもをつくることのコストやデメリットもよく語られています。真面目な人ほど「はたして自分は育てられるのか?」と悩むかもしれません。

やっぱり子どもが生まれること自体は、いろいろな補助があるとはいえ、時間もお金もかかります。フルタイムでバリバリ働きたい人は、そうできないことにフラストレーションもたまるだろうし、子どもを生まないという選択をする人の気持ちもすごくわかる。

だけど、得られるものもたくさんあったので、やっぱり自分は子どもが生まれてよかったと思えます。育児に関する情報もどんどんアップデートされているし、この本もひとつの例として、読んでもらえるとうれしいですね。

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【本人さん】

都内在住の30代男性。平日にサラリーマンをしつつ、さまざまなライブやフェスに足を運んで記録するインターネットユーザーとしても活動している。Twitter:@biftech。著書に『こうしておれは父になる(のか)』(イースト・プレス刊)がある