なぜ男性は小さな面倒を押しつけてくるのか。なぜ人の話を聞かないのか。なぜ女性と男性はこんなにもわかり合えないのか。
そんな「あるある」と「どうしてこうなったか」をまとめた書籍『よかれと思ってやったのに 男たちの「失敗学」入門』という書籍が話題です。

仕事とプライベートで別人のようになってしまう男たち
仕事とプライベートで別人のようになってしまう男たち
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に引き続き、著者の清田隆之さん(「桃山商事」代表)に、夫や父親、義理の父親(舅)など男性とうまくつき合う方法を伺いました。

女性が男性に対して感じている「イライラ」を言語化!

女性が男性に対して感じている「イライラ」を言語化!
「身近な男性に思いを伝える際の“説明代行本”として役立ててもらいたい」と話す清田さん

『よかれと思ってやったのに 男たちの「失敗学」入門』の各章には、具体的でリアルで残念な男性たちの所業が書き連ねられています。
たとえば「小さな面倒を押し付けてくる男たち」で挙げられているエピソードはこんな感じ。

・夫は「バスタオルは?」「あのTシャツどこだっけ?」など置き場所を覚えない
・「ティッシュ持ってる?」「ハンカチある?」と聞いてくる彼氏。自分で持てや!
・同棲中の彼氏は何度注意しても食器の洗い方やゴミの捨て方を直そうとしない
・職場の男性たちはトイレの紙やウォーターサーバーの水を“ちょい残し”する
・旅行の手配や結婚式の準備を任せっぱなしにしてくる夫にいつもイライラしている

今この瞬間にも日本全国で女性が男性に対して感じているような「イライラ」を言語化。「あるある!」と盛り上がりながら「どうしてそうなるのか」「どう対処すべきか」を学べます。

「どうしてそうなるのか」「どう対処すべきか」を学べます
残念な男性の生態が図やイラスト入りで分かりやすくまとめられています。

著者の清田さんに、男女の相互理解について伺います。

「〇〇社の〇〇さん」という肩書は男性にとって一生の宝物

――ESSEonline読者的には自分の夫はもちろん、自分の父親や夫の父親との関わりというのもこれから重要になってきます。もし病気や介護、ボケなどの状況になったとしても、相手が「話し合いができない男」「イキるだけで行動が伴わない男」だったりすると積極的に関わりたくなくなります…。 この本に出てくる男性は3~40代のイメージですが、高齢者の男の人ならではの問題もありますね。
もっとも不安だと思うのが「定年退職」した男性

個人的にもっとも不安だと思うのが「定年退職」した男性です。ずっと会社人間でやってきて、生活能力が著しく低い、コミュニケーションも全然取れないという夫や父親を疎ましく思っている女性の話もよく聞きます。

平成元年の流行語大賞を受賞した言葉に「濡れ落ち葉」というものがあるのですが、定年後ずっと妻にくっついて行動する夫への鬱陶しさを意味しているそうで、恐ろしい言葉だと感じました。しかもこれは30年以上前から存在している問題なわけで…。

以前、定年退職された男性にインタビューをしたことがあるのですが、名刺をいただきまして、そこには「元〇〇新聞」と書いてあったんですね。退職しても当時の肩書が大事なんだ! と衝撃で。

会社人間として人生の大半を過ごしてきた男性は、「〇〇社の〇〇さん」という成分が本人のほとんどを占めているのかもしれない。

そう考えると、父親や義理の父親とうまくやっていくためには、対処療法的ではありますが、仕事や社会の話を振ってみるのがいいかもしれません。もちろんその内容に興味をもてなければ退屈な時間になってしまうので、万能な対策というわけではないのですが…。

――一方で、女性の男性化が進んでいるようにも感じます。離婚したくてもお金がなくて踏みとどまる女性とは対照的に、共働きで男性と同じように稼ぎ、家庭内でも男性と同じように発言権があって。 本の中でホモソーシャル(※女性や同性愛者を社会的に排除して男性同士の連帯を確かめる関係性のあり方)のエピソードが印象的でした。強くてお金をもった女性が増えると、ホモソーシャルの女性版もありうるのでしょうか? そういったシスターフッド(女性同士の連帯)は増えているのでしょうか?

どうなんでしょう…。力をもつ女性が増えているのは確かだと思いますが、シスターフッドはホモソーシャルを反転させたものではないと個人的には思っています。

ホモソーシャルが必ずしも悪だとは思いませんが、これまで見聞きしたエピソードには、風俗に行ったあと品評会で盛り上がる男性たちの話とか、飲み会に若い女子を呼び、お酌係をさせて悦に入る男性たちの話など…正直しんどいものがほとんどでした。

上下関係に従順すぎる男たち
上下関係に従順すぎる男たち

また、ホモソ男性の価値観がよく表れた「トロフィーワイフ(=美人と結婚することが勲章になる)」という言葉がありますが、これは自分の好みというよりも、自分の評価につながったり、仲間内で一目置かれることが目的となっている。

一方のシスターフッドですが、前提として僕は男性なので、女性同士の連帯についてリアリティをもって理解しているわけではありません。ただ、たとえばアメリカのドラマ『セックス・アンド・ザ・シティ』や、最近では脚本家・坂元裕二さんの作品群のように、女性たちの連帯には「それぞれ個人として自分の人生を生きながら、互いの状況をシェアし、理解やいたわり合いによって連帯していく」というイメージがあります。こういう連帯は、ホモソーシャルにはあまり見られないあり方だと感じています。

ジェンダーに敏感な時代。よりよい夫婦関係のために「文化」を摂取せよ!

よりよい夫婦関係のために「文化」を摂取せよ!
――以前は私自身が男性の「男性らしさ」「マッチョイズム」に拘泥していたというか、いわゆる関白な男性に理解を示すことがモテにつながると思っていたこともありました。でも確実に時代が変わっているのを感じます。 ここ最近ジェンダー論が熱くなってきて、今まで当然のように受け入れていた抑圧に女性が敏感になっていたり、Twitterなどを見ていてもミサンドリー的に男性に嫌悪感をもったりする人が増えているような気がしますが、清田さんの肌感的にいかがですか?

確かに、男性に対して怒りや絶望を感じている女性が増えてる感はありますよね…。伊藤詩織さんの事件に端を発した一連の「#metoo」ムーブメント、CMの炎上や政治家による失言報道など…いろんな事件がメディアを騒がせるようになっているし、会社でもセクハラ研修があるなど、男性たちも現場レベルで変化を体感しているはずで、昔だったら「こんなこと言っちゃダメか~笑」で済んでいたのが、場合によっては大問題になったりする。

そういう変化を受けて自分の男性性について内省している人も多いと思いますが、内心では「女性の方がむしろ優遇されている!」と感じたり、職場で「だから女性は面倒くさい」「やりづらい」「仕事のノルマを厳しくしたいのにパワハラになっちゃう」など、女性に対してお門違いの怒りを抱いている男性も少なくないと思います。

実際に僕の知り合い男性にもそういうことがありました。彼は会社の後輩に酔った勢いで「二人でデートしようよ」とLINEを送ってしまい、上司に報告されて、厳重注意を受けたそうです。