お墓問題について、両親が健在な場合や「一族の墓」がある場合は、つい後回しに考えてしまいがちです。

「しかし、人の死はいつ訪れてもおかしくないもの。そのときにお墓の知識がたりなかったことで、故人を満足に見送ることができない場合や、家計が打撃を受けることも」というのは、葬儀関連サービス企業でPRを務める高田綾佳さん。

お墓をめぐるトラブルについて、葬儀の現場でよく聞かれる声をもとに、奈緒さんという方のケースを例にして紹介してくれました。

墓
亡夫が入るお墓がない…!(※写真はイメージです)
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兄弟仲が悪い夫と義兄。夫が亡くなり、今まで疎遠にしてきたツケが…

奈緒さんは40代の専業主婦。同年代の夫、中学生の娘と3人で、都心部に暮らしています。
夫は大きな農家の次男。義兄は家業や土地などをすべて継いで、入院中の義母の面倒を見ながら実家で暮らしています。兄弟仲はよくないようで、義父の葬儀以降は夫の実家に帰省していません。

奈緒さんは、義兄の人となりすらよくわかっていないその状況をいいとは思っていませんでしたが、「兄と暮らしたくないから都心部に出てきた」という夫に気を遣って、あまり夫の実家と連絡を取らずに過ごしてきました。

●亡夫の葬式に参加した義兄。わだかまりがとけることもなく…

そんなある日、夫が交通事故で他界してしまいます。突然のことに動揺した奈緒さんでしたが、まずは夫の実家に連絡。義母は入院中で移動が難しく、義兄が一人で夫の葬儀に参列しました。

夫の同僚などが大勢訪れて慌ただしいのを横目に義兄は「都会の葬儀はよく知らん」と奈緒さんを手伝わず、通夜ぶるまいでは参列者の女性にお酌をさせるといった調子。

必死に喪主をこなした奈緒さんは、義兄のガンコな一面に少しむっとしてしまいましたが、それ以上のことは特段気にすることはありませんでした。

義兄のガンコな一面に少しむっとしてしまいました

慌ただしく四十九日が近づいてきたところで、夫の遺骨を納めるお墓を手配しなければならないことに気づいた奈緒さん。しかし奈緒さん一家は奈緒さんが専業主婦だったこともあり、蓄えは多くありません。

また、年頃の娘を抱えたシングルマザーとなったことで学費や生活費が心配で、あまりお金は使えない状況です。

●亡夫の入るお墓がない!困り果てた奈緒さんが電話したのは…

頭を悩ませた奈緒さんは、夫が義父の納骨時に「このお墓は本当に立派だな。自分で買うと高いから、この墓に入ることができたらいちばんかもしれない」と話していたことを思い出しました。そこで奈緒さんは、夫の遺骨を実家のお墓に入れてもらえるか相談するため、葬儀の時以来に義兄に電話をしました。

すると、義兄は「家督と家業は俺が握っている。墓の管理者も俺だ。この家では次男は実家の墓に入れない」と夫の納骨を拒否したのです。夫が生前にこのお墓に入ることを希望していて、また、お墓を建てると経済的に厳しくなり、娘の養育費すら危うくなってしまうことを伝えても「そんなことは知らない」と一本調子。

最終的には「弟は勝手に出て行ったし、父が亡くなってから一度もこちらに帰ってきていない。あんただってそうだろう? うちとはもう関係ないじゃないか」とまで言って、一方的に電話を切られました。

夫の希望を叶えることが難しくなったうえ、せめてお墓に入れてあげたいのに家計に余裕がない奈緒さん。夫の遺骨を眺めては申し訳なく感じる日々が続いています。

いったい、奈緒さんはどうしたらよかったのでしょうか?