ペットの柴犬の写真をツイッターに投稿し続け、その自然体のかわいさが人気となっている
@inubot。ESSEonlineでは、飼い主で写真家の北田瑞絵さんが、「犬」と家族の日々をつづっていきます。
第13回は、月に1度のシャンプーのお話。
シャンプーひとつに信頼感。気持ちよさそうに洗われてくれます
1か月に一度、風呂場で犬をシャンプーしている。
最初は私や母も不慣れだったのもあって、ほえて抵抗していたが、そのころに比べたら今は手がかからなくなったものだ。私もシャンプーの腕をみがきつつ負担を軽減できるように工夫しつつ、だんだん犬も譲歩してくれるようになった。シャンプーひとつとっても互いの歩み寄りでできている。
すべての画像を見る(全20枚)妹と犬と、山が深い場所へと車を走らせた。助手席に犬、後部座席で妹がケツメイシやリップスライムを流している。夏恒例の川遊びである。
そろそろシャンプーだなと思っていた頃にちょうど妹が帰宅するというので、せっかくだから体を洗う前に思いきり川で遊ぼうということになった。
川に入っていって泳ぎ始める姿は何度となく見ているのに、いつも感動が押し寄せるのだ。岸辺から水の中に入っていくときの臆せず平然とした一歩にまず拍手、泳ぎ出せば大喝采である。
水平型エスカレーターに乗っているかのようにすらすらと前進している。体重が軽いといっても、小さな手で水をかいて進むことは相当な運動量だ。
しかし余裕しゃくしゃくといった様子で何周も泳いでいるところを見るとかなりのスタミナをもっていて、小さな頃からよく遊んだことで筋肉が発達したのだろう。この前、ボール遊びの最中の写真を見て、隆々とした右腕の筋肉に驚いたものだ。
折り返すときになめらかにくねる体と、伴って揺れる水面がきらめいている。光を連れて進路を変えていく。スーダラ節が脳内で流れた。植木等さんも最高だが、このときは星野源さんのアコースティックバージョンで。
水かけっこではないが、川の水をすくって空に放ってやると犬が飛んでくる。ホースから噴出している水もそうだが、勢いよく放ったり、跳ねたりする水の動きは気になってしまうのだ。
シャンプーを始めた頃は、泡を流すときにもちろん水圧は緩めにしていたが、それでも難儀した。そのときは体が濡れることがいやで興奮しているのかと思ったが、川で泳ぐ姿や、水に向かって跳ねる姿を見ていて、シャワーではなく桶でかけるようにしたら興奮することなく洗い流させてくれるようになった。もちろん慣れもあるだろうが。
泳いで遊んで満たされたところで、帰路についた。うちに帰ればシャンプーの時間です。
シャンプーをするときに妹がいることは初めてだった。普段私だけでは手がふさがっていて携帯も持てないので、妹に風呂場での様子を撮ってもらった。体を洗われているときの犬の姿が写真に残ったこと、こんな表情なのかとまじまじと見られることがうれしい。
まずは犬用のシャンプー液を泡立てて、背中から、指の腹で掻くように毛を梳かしていく。
背面を洗われることは平気そうなのだが、お腹にいくと少し気難しい。
そんなときにはブラシである。犬は日頃からブラッシングをされるのが大好きなので、ブラシで背中をかいていたら座ってくれるのだ。その体勢を取ってくれたら首下から胸元、お腹を洗ってしまおう。
なんだかんだ気持ちがいいのか、グ~ッと胸をはってきて鼻先が上へ向いていく。わずかな抵抗心と気持ちよさが混在しているような態度だが、真正面から表情を見て「ええ感じ」と妹が笑った。妹が一緒だからかいつもよりご機嫌そうだ。
途中何度も体をブルブルッと振るので、そのたびに弾けた泡や水がこちらにビタッと飛んでくる。
お風呂から上がれば次はドライヤーで毛を乾かすのだが、シャンプーに対してドライヤーはさほど嫌がらず、基本なされるがままだ。ドライヤーの風にのって、毛が舞っていく。
ただ時間がかかってきたら嫌になってくるので、ここでもスピードが求められる。夏の毛並みは乾きやすいためラクだ、冬場は戦い。シャンプーをしてドライヤーを終えた犬の毛並みは一層ふかふかとやわらかく、毛艶がよりよくなった。
「あらキレイなって~」と母が犬の頭をなでれば、母の掌に額を押しつけるように鼻先がまた上がる。
母、妹、犬が輪になるように横になれば、休憩時間の始まりを告げるチャイムが聞こえる。
シャンプーはドライヤーをして終わりではない、ぐうたらと休憩するまでがワンセット。
また1か月めいっぱい遊んで、たくさん汚しておくれ。
この連載が本
『inubot回覧板』(扶桑社刊)になりました。第1回~12回までの連載に加え、書籍オリジナルのコラムや写真も多数掲載。ぜひご覧ください。