「リビング学習」が脳の発達や集中力をもたらす理由

リビング学習
画像はイメージです。(画像素材:PIXTA)
すべての画像を見る(全4枚)

家のなかのどこで勉強するかも検討の余地があります。子ども部屋を用意されているケースが多いかと思います。とくに問題はありませんが、あえてここでは、小学生がリビングで勉強することのメリットをお伝えしましょう。脳の発達や集中力を高める利点があるからです。

●理由1:親の目が届きやすく声かけしやすい

リビング学習の最大のメリットは、親の目が届く環境にあります。脳の前頭葉は計画性や自己制御、注意力などをつかさどる重要な領域ですが、幼児期から思春期にかけては未熟であり、適切なサポートが欠かせません。

リビングで親が適度に声かけをしながら見守ることで、子どもが集中力を維持しやすくなります。実際、2021年に東京大学の学生、大学院生249人を対象に実施されたアンケート調査(※10)では、東京大学に合格した学生の半数近くが、小学生時代にリビング学習をしており、親に見守られながら学ぶことが成績向上につながる可能性を示しています。

●理由2:家族との密なコミュニケーションを生みやすい

リビング学習をする小学生と母親
※画像はイメージです(画像素材:PIXTA)

リビング学習は家族間のコミュニケーションを豊富にする点でも有益です。リビングという共通空間で勉強していると、子どもはわからない問題をすぐ親にたずねたり、日常の出来事を共有しやすくなります。

こうした日常的な会話は子どもの語彙力や理解力を高め、言語能力をつかさどる脳の領域の発達を促進します。

さらに、家庭内での頻繁なコミュニケーションは、子どもの社会的スキルや共感力などの非認知能力を育むためにも重要な役割を果たします。

子どもの学習環境は、一人ひとりの個性や家の間取り、生活習慣、家族間の関係などによって大きく変わってくるでしょう。そのなかで、今回紹介したものをヒントに、子どもにとって最適な環境を整えてあげてください。

※ 1 ワシントン大学ジョアン・ルビー博士ら(2012年)の研究https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.1118003109

※ 2 ペンシルベニア大学のブライアン・B・アヴァンツ氏ら(2015年)の長期調査
http://dx.doi.org/10.1371/journal.pone.0138217

※ 3 複数の大学によるアメリカの研究チームが行った1,235家族を対象とした研究(2016年)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/pmid/29720785/

※ 4 ロンドン大学のイヴォンヌ・ケリー教授らによる11,178人の幼児を対象とした縦断研究(2013年)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3812865/

※ 5 スイスのバーゼル大学(2011)https://doi.org/10.1371/journal.pone.0016429
イランのハマダーン医科大学(2017)https://doi.org/10.1016/j.physbeh.2017.05.008

※ 6 テキサスA&M大学のランジャナ・K・メータ博士らの研究(2015年)http://dx.doi.org/10.3390/ijerph13010059

※ 7 スペインのルビーラ・イ・ビルジーリ大学による21の研究を分析した論文(2025年)http://dx.doi.org/10.3390/app15084128

※ 8 シカゴ大学の心理学者マーク・バーマン准教授らが大学生を対象に行った研究(2008年)https://www.researchgate.net/publication/23718837_The_Cognitive_Benefits_of_Interacting_With_Nature

※ 9 ウィーバー州立大学のロバート・ボール博士らの大学生を対象とした研究(2005年)
https://icarus.cs.weber.edu/~rball/pubs/Effects%20of%20Tiled%20High-Resolution%20Displays.pdf

※ 10 2021年に東京大学の学生、大学院生249人を対象に実施されたアンケート調査
https://president.jp/articles/-/53264
「プレジデントFamily(ファミリー)2022年1月号(2022年冬号:【15周年特別版】子供が「集中」する部屋)」(プレジデント社)