3DKの高齢者向け団地に暮らす75歳のエッセイスト・小笠原洋子さんは、「1日1000円」という限られた予算でも心豊かに生きるために、日々の生活に独自の工夫を取り入れ、充実した毎日を送っています。そんな小笠原さんに、普段の「食事」について、また、毎日を生き生きと過ごすための秘訣を聞いてみました。

小笠原洋子さんに、普段の「食事」について聞いてみました
小笠原洋子さんに、普段の「食事」について聞いてみました
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調味料を使わないから気づく、素材の味

75歳のエッセイスト・小笠原洋子さん
75歳のエッセイスト・小笠原洋子さん

画廊と美術館での学芸員経験をもち、現在は、暮らしの予算を1日1000円以内と決め、ひとり暮らしをする小笠原さん。その驚くほどシンプルな食生活について、詳しく教えていただきました。

「私は料理はできるだけ簡潔に、手早くすませることを心がけています。じつは私は古代食というか、原始時代の人々が食べていたような、素朴な料理にとても興味があるんです」(小笠原さん、以下同) 

小笠原さんの料理は調味料をほとんど使わないそう。このスタイルは、節約だけでなく素材本来の味覚を研ぎ澄ますことにもつながっているようです。

「塩辛い味がそれほど得意ではなく、『もしかしたら塩分が少ないんじゃないか』と感じるくらいがちょうどいいんです。調味料は本当に最低限しか使いません。なぜなら食材そのものの味、たとえば豚肉なら、豚肉が本来持っている味わいに深い興味があるのです」

豚肉をただゆでただけの味って、じつはとてもミルキーで、ほのかに甘みがあるんですと、小笠原さん。

「その風味はお醤油を入れちゃったらわからない。この素材は一体どんな味がするのだろう、という興味を満たすためにも、調味料を極力使わない調理法が気に入っているんです」

料理もシンプルに。鍋料理が大活躍

ひと鍋料理

そんな小笠原さんの食卓には、長年続けているアイデア料理があるのだそう。それが小笠原さん命名の「永遠のひと鍋」。

「もちろん、永遠というのは誇張ですが(笑)。 たとえば、最初にキャベツと豚肉をお鍋に入れて煮込みますよね。それを一食分としていただいたら、次の日には鶏肉を加えたり刻んだネギを足したりして、少しずつ食材を増やしていくんです。そうやって、ひとつのお鍋をアレンジしながら食べていくというスタイルです。

もちろんお鍋は適宜洗いますし、途中で味つけに変化を加えることもありますが、できる限りひとつのお鍋を食べ継ぐようにしています。これが時間も手間もかからず、とても楽なんですよ」