女優・川上麻衣子さんの暮らしのエッセー。 一般社団法人「ねこと今日」の理事長を務め、愛猫家としても知られる川上さんが、猫のこと、50代の暮らしのこと、食のこと、出生地でありその後も定期的に訪れるスウェーデンのことなどを写真と文章でつづります。今回は、八ヶ岳での旅で感じた自然の魅力やスウェーデンの文化との共通点、終の棲家への思いを語ります。
すべての画像を見る(全7枚)フィーカ:fikaはスウェーデン語でコーヒーブレイクのこと
八ヶ岳の森へ、小さな旅
新緑が気持ちのいい季節。ゴールデンウィークも天気に恵まれた今年は、ソワソワしながらも仕事に追われていました。そんな自分へのささやかなご褒美として、少し遅れて郊外まで小さな旅をしてきました。
行き先は山梨県の八ヶ岳。秋に予定している「八ヶ岳倶楽部」でのガラス展の視察とご挨拶を兼ねた1泊旅行です。八ヶ岳倶楽部は俳優の柳生博さんが長い時間をかけてつくり上げた、美しい森の中に佇む店舗とギャラリー。
残念ながら柳生博さんとの交流はなかったのですが、二男の柳生宗介さんとのご縁があり、私の作品展の話が実現しました。
どんな作品をつくろうかと構想を練りながら、車でのドライブが始まりました。
自然に触れる豊かさ、終の棲家への思い
東京から車で約2時間のドライブは、どうしたってユーミンの歌を口ずさんでしまいます。中央道の、右に見える競馬場、左にビール工場を抜ける頃には、都会の空気が一変。
行きの曇り空では富士山を拝むことはかないませんでしたが、旅気分は上々。都会を離れる心地よさを久しぶりに味わいながら、八ヶ岳に到着する頃には山々の雄大な姿が現れました。
柳生博さんが八ヶ岳で暮らしを始めた理由も、都会での忙しい生活で崩れた心身のバランスを取り戻すためだったと聞きました。「田舎暮らし」という選択は今では珍しくありませんが、柳生さんがいち早くそれを実践されたのだと思います。
白髪が目立つこの年齢になり、私もいよいよ終の棲家について現実的かつ具体的に考えることが増えてきました。豊かな自然、おいしい水のある場所に暮らすことができたら、どんなに穏やかで幸せだろうかと想像します。