37歳で初めてのひとり旅を経験して20年以上「ひとり旅に取り憑(つ)かれている」と語る、作家の有川真由美さん。数多くのひとり旅を経験した有川さんが感じるひとり旅のメリットや旅で心がけていることについて、実体験とともに教えてもらいました。

旅行中の女性
※画像はイメージです(画像素材:PIXTA)
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旅のスケジュールはざっくりフレキシブルに

スケジュール長
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ひとり旅をするとき、私の目的は大抵ひとつ。たとえば「日本の最北端に立つ」とか「宮古島の3つの橋を渡る」とか。「友人の○○さんに会いに行く」「友人数人と現地で集合」など、人に会うための旅も多い。

だから、そこまでの交通手段のチケットとホテルだけ、場合によってはレンタカーを予約して、あとの予定は行ってから決める。

「せっかく行くのだから、できるだけ多く回りたい」と欲を出してスケジュールをつめ込んでしまうと、それを遂行するための時間に追われることになる。まるで“ひとりツアー旅行”のように、せかせかと時間に追われて回ったり、ぐったり疲れたりしては、なんのための旅なのかわからなくなる。

スケジュールは1日1~3個ほどざっくりと決め、旅先で「蚤(のみ)の市をやっているからのぞいてみよう」「ホテルのスタッフが勧めてくれた食堂に行ってみよう」「おもしろそうなショップがあるから入ってみよう」などと、そのときの“ノリ”と“感覚”を大事にしたほうが、旅は楽しい方向に転がっていく。

旅は現地に行ってからわかることが、とても多い。いくらでもフレキシブルに予定変更できるのがひとり旅のメリット。雨が降っているときや、ゆっくりしたいときは一日じゅう、ホテルやカフェで過ごしたっていいのだ。

ひとり旅でしなければならないことは、なにひとつないのだから。

とにかく「初めてのこと」をたくさんしよう

私はひとり旅のなかでできるだけ「初めてのこと」をすると決めている。なぜなら単純に楽しくて、刺激的で、記憶に残るから。

たとえば、友人に会いに滋賀県に行く旅は、初琵琶湖、初なんばグランド花月、初立ち食い寿司。初めてのホテルに泊まる。初めての人に会う。初めての駅で降りる。初めての名産品を食べる…と、初めてづくし。

すると、人に会うことが目的の旅に、さらに遊びの要素が加わってウキウキ、ワクワクするものになる。

20年ほど前、台湾の本を書くために日本人作家9人で旅したことがあった。台湾のガイドさんに「パラグライダーをやってみませんか?」と提案されて、男性陣はビビッているなか、70代の女性作家が「私、やりたいわ!」と目を輝かせた。「いまやらなければ、きっと私の人生でやる機会はないと思いますの。一度くらい、鳥の気分になって空からの景色をながめてみたいわ」という言葉に私も触発されて、一緒に初体験をしたのだった。あのときの体験は、いまも体の感覚として残っているし、話のネタにもなっている。

人が生き生きしているかどうかは、未知なるものへの「好奇心があるか」が大きい。年を重ねるほど、知った気になって興味を失いがち。「まだまだ知らないことはたくさんある」と意識して初体験をしたいものだ。