新生活で環境が変わり、不安を抱えている人も多いのではないでしょうか。SNSの総フォロワー数が40万人を超える「爆速レシピクリエイター」のおよねさん(@oyone.gram)も、数年前まではワンオペ育児に悩み、年収減や夫が無職になるなど悩みがつきない時期を経験していました。4月からはESSEonlineでのレシピ連載もスタートするおよねさんに、当時の状況や困難を乗り越えたきっかけなどを伺いました。
すべての画像を見る(全5枚)何年も続くワンオペで心も体もギリギリ状態
忙しい人向けに開発した時短レシピがSNSでバズり、料理本の出版、テレビ出演など大人気のおよねさん。小学4年生の娘と春から小学生になる息子をもつ母でもあります。
じつは数年前までは、いわゆるワンオペ子育てに心身ともにボロボロで、イライラしながら過ごしていたのだそう。
「結婚当初、私はベンチャー企業に勤める正社員でした。もともとは夫婦ともに『めちゃくちゃ働くぞ!』というキャリア志向。平日のごはんが別々なんて当たり前、家事も『なんとなくできる方がやる』という形でうまくいっていたんです。ただ、長女が生まれたことで生活が激変してしまって…」
約10年前に長女を出産してから数年間、食事の支度からお風呂、寝かしつけ、保育園の手配や毎日の送迎まで、すべてをひとりで担っていました。前職を時短勤務にきり替えても続けられず、結果的にその仕事を諦めて、融通の利く仕事に転職したものの、毎日がギリギリの状態でヘトヘトだったと言います。
しかし、いくら子どものことで悩むことがあっても、当時は夫に助けを求めることはなかった、とおよねさん。
「私自身が『家事や育児は女性の役割』と思い込んでいましたし、自分も出世を目指して必死に働いていたので、夫の仕事がいかに大変かもよくわかっていました。だから夫にはなにも言わないまま、私ひとりでどんどんストレスをため込んでいきました。『私のキャリアはどうなるの?』『なんで私ばかりつらいの?』と、不安やイライラを長年ひとりで抱えていました」
幸せを考え直したきっかけは夫の「適応障害」
そんな中で、転機が訪れたのは2021年の秋。夫の卓也さんが適応障害を患ったのです。
「夫の会社は厳しい成果主義だったため、精神的にも体力的にも限界が来てしまったみたいで。まじめな性格の夫は、決算時期は毎年本当に緊張してピリピリしたり、眠れなくなったりしていました。今思えば『あれ、おかしいな』という不調もいくつかあったと思います。私自身が子育てと自分のことでいっぱいだったので、そんなサインも見逃していたんです」
診断を機に、それまで勤めていた会社を辞めることを決意した卓也さん。突然無職になったことにおよねさんも動揺し、大きな不安に襲われました。
「この時期は本当に先も見えず、どん底のように感じました。ただ、夫も無職になり時間があったので、このときにいろいろなことを話し合ったんです。『お互いがんばって生きているのに、どうして幸せじゃないんだろう?』『そもそも私たちの幸せってなんだろう?』。そんなことをひとつひとつ紐解いて、この暗闇から抜け出そうとしていました。毎日神社にお参りもしてたくさん話しあった結果、『私たちは、出世やお金を稼ぐといった、いわゆる成功者的な価値観に縛られすぎていたのかも』という結論にたどり着きました」
2人で始めたSNSの発信が吉となり…
「幸せ」についてを考え直した2人は、「もっと自分たちらしい、等身大の幸せを探してみよう」と決意。その後卓也さんは別の会社に就職しますが、同時に2人の新しいチャレンジもスタートしました。
「彼が『もともと好きなファッションに関する発信を始めてみようかな』と言い出したんです。たしかに好きなことをする時間は大切だし、セルフヒーリングの効果もあるかもしれないと思い、『それすごくいいアイディアだね!』と私もあと押ししました。その際、『私もなにかやってみようかな』と思い立って始めたのが料理の発信だったんです」
こうして2人がSNSを始めたのが2021年の12月末。およねさんの発信は瞬く間に広がり、23年には料理本を出版。その後、卓也さんはSNSこそ卒業しましたが、新しい仕事や人間関係によって健康を取り戻し、今ではおよねさんと設立した会社を運営しています。
「もちろんすべてが順風満帆ではありませんが、なんとか家族がプラスの方向に動き始めたのがこの頃から。今は子育てや家事も夫婦でバランスを取りながら進めています。夫の場合は、家事や育児も仕事と同じようにゴールを定めると動きやすいみたい。単純に以前は、『子育てプロジェクト』のメンバーに入っていなかっただけなのかもしれない、という気づきもありました」
どん底を経験し、話し合うことで自分たちの価値観をアップデートしたことが、家族が再スタートするきっかけになった、とおよねさん。それからは子育てや仕事への向き合い方にも迷わなくなったのだそう。