旬の果物は新鮮なうちに食べたいけれど、古くなるとジャムなどに加工したりする人もいるでしょう。兼業でミカン農家をやっている作家作詞家の高橋久美子さんもその思いがありつつ、調理してみるのもまた別のおいしさがあると語ります。今回は焼きリンゴをつくったお話をつづってくれました。
すべての画像を見る(全3枚)焼きリンゴで日曜日
青森のリンゴ農家の友人と、愛媛のうちのミカンを交換し合うようになってもう10年近くになる。うちのミカンは、関東以北からの注文が多いが、リンゴもやはり西日本での方が珍しがられるようだ。ないものねだりだね。彼女の子どもはミカンをとてもとても喜んでくれる。あそこまで喜んでくれる人は愛媛にはそういませんよ。
逆に、愛媛でリンゴはめちゃくちゃ喜ばれる。姪っ子たちも、届いたリンゴを喜んで食べて、青森のまだみぬ友人にお手紙を書いていて、そういう作物をとおした交流はいいものだ。食べるときにつくってくれた人の顔や手を想像するし、リンゴ農家のニュースが流れていたら前のめりで見てしまう。人がつくったものを、食べているんだと意識して育つことは、とても大切なんじゃないだろうか。
そんな貴重なリンゴだが…。
「王林は早めに食べてくださいね」と書かれていたのに、2つだけもったいなくて残してしまっていた。1か月後、触ってみると、しわしわっとしてきている。あー、やっちまったなあ。これはきっと中がぽかっとしてしまっとるだろなあ。
ミカンは追熟させると、どんどん甘みが増すが(そのかわり酸味がとぶ)、リンゴは、すかすかになってしまう。ミカンのように厚い皮に覆われてないから水分が飛びやすいのだろう。
よし、焼きリンゴにしよう。
新鮮な果物はぜひそのまま食べてほしいというのがつくり手の私の思いだ。きっとリンゴ農家さんもそうだろう。新鮮ぷりぷりのミカンを送ったけれど、「ジャムにしました」とか「ジュースにしました」と連絡をもらったときには、のけぞった。またとれたて野菜を「糠漬けにしました」と言われたときも、あー、いいけど、いいけどー、まずはそのまま水分が含まれた状態で食べてほしいなあ。言わないけど、そんな気持ちになる。果物を焼いたりジャムにするのは、大量に取れすぎたときや、傷んできたときの最終手段かなと。お菓子屋さんは別だけどね。まずは、ぜひそのまま食べてほしいのです。
…なんて思ってたんですけどね、焼きリンゴが、あまりにおいしくて、こりゃあ新鮮なリンゴでもやってみたくなるなあと思った。本当に簡単でおいしいのねえ。冬はとくに温かいものが食べたいし、お砂糖もほぼ使わないのに甘くて香ばしくて最高じゃないですか。