経験から得た、自身の成すべきこと
その方だけではありません。大企業や政治の世界からも、組織の中でパワハラを受けていたり、板ばさみになったりしている方の悩みがたくさん届いています。
すべての人が「長いものに巻かれろ」と考え、歪んだ権力を正すことをしなければ、この世界は救いようがなくなってしまうでしょう。そんなひどい世界になってしまったら、反抗する人が権力の力で殺されて闇に葬られたり、どうすることもできずに自殺に追い込まれるなどしても、家族は声を上げられません。
そのような世界にしないよう、同じ思いを持つ仲間をつくりながら、一緒に声を上げていってほしいのです。
私自身、伝統仏教の大宗派を離れ、独自の宗派を打ち立てた異端児です。ですから、いろいろな板ばさみやバッシングも嫌になるほど経験しています。
しかし、どこにどのように所属していようと、僧侶として、住職として、自分の成すべきこと、果たすべき役割を真摯に成し遂げたいと考えています。そのために、学ぶべきことを学び、修めるべきことを修め、成すべきことを成す覚悟と実践を離れることはありません。だから弟子たちも、人々もついてきてくれるのだと思います。
●組織や権力に物申すためには、勇気だけではたりない
そんな私の体験からいえることは、組織や権力に物申すためには、勇気だけではたりないということ。蓮の花は美しく、花に注目が集まりますが、じつはその根はとてもしっかりしています。
だから周囲と闘うことになっても、倒れずにいられるのです。自分を貫いて立ち上がるには、水面下にきっちり根を張ることが必要です。きちんと勉強し、きちんと行動し、誠実で前向きな姿勢を忘れてはなりません。そうすることで初めて、ついてきてくれる仲間が集まるのです。
世の中には2種類の人しかいません。問題をだれかのせいにして嘆き続ける人と、自ら問題を見つけ、解決しようとする人です。
もしも周囲で理不尽なことがあっても、見て見ぬふりをする人にはならないでください。どうか問題と真摯に向き合い、泥中にあっても凛とした花を咲かせてください。
文庫『最後にあなたを救う禅語』(扶桑社刊)では、50の禅語とメッセージを紹介しています。大愚和尚だからこそ伝えられる、苦しみを手放し、困難を打破する教えが満載の一冊です。
※ この記事は、文庫『最後にあなたを救う禅語』(扶桑社刊)より一部抜粋、再構成のうえ作成しております