小学生低学年の「探究力」「調査力」に脱帽

――今年で6回目になりますが、子どもたちのチームもたくさん出場しているのだとか。

「毎年びっくりしますが、小学校低学年でもものすごい探究力や調査力を持った子が発掘されます。小学生はマイクラに没頭できる時間が相対的に多いので、中高生に比べて遜色ない、すばらしい作品を披露してくれることも多々あります。ただ、参加してすぐにそういった能力を発揮できる子だけでもなく、毎年挑戦するなかで、すこしずつ成長してレベルが上がっていく子もいます。

カップではだんだんと全国にコミュニティができていっています。中学校などの先生が熱心で、部活的に活動しているコミュニティもありますし、高校生の大会OBや大人の指導者が小中学生に指導してくれるNPOや、プログラミング塾のチームもあります。

すごくいいなと思うのは地域性が関係ない。都心有利のバイアスが働かないところなどはデジタルのいいところだと思います。たとえば石垣島のチームとかめちゃくちゃ強いんですよ! その土地のよさがでていて。彼らの表現はすごいです。燦燦とした太陽のもとで育っているなっていうのが、マイクラの画面からひしひしと伝わってきます。年々こういったコミュニティが全国にできつつあります」

冬休みは「親子でマイクラ」がおすすめのワケ

――マイクラを学習のツールとして使うには、具体的に家庭ではどのような指導をすればよいのでしょうか。

「あまり真面目に考えすぎずに、子どもたちの意欲に任せることがすごく重要です。今の教育の課題として子どもたちに余白がないことが挙げられます。言われたらやるけど、言われなければやらない。日本はOECD(経済協力開発機構)の調査で、学力は加盟37か国中でトップクラスなんですが、自律性のある学習については最低ランク。

マイクラから得られるのは、この自律性自発性を発揮して『創意工夫する自由』。そして、それによって獲得される『自己肯定感』です。そのためには、子どもがゲームをしている最中には、保護者はあまり介入しすぎないほうがいいのです。

マイクラはがんばったら目の前に“ワールド”ができてるので、自己肯定感が高まるに決まってるんですよ。「ボクすごい!」って。集中や没頭が形になって見えやすいんです。親御さんは子どもさんが作ったワールドを見たら普通に驚くと思いますから、あんまり意識せずそのまま驚いて、そしてほめてあげてください。あとは子どもたちの作ったワールドを楽しんであげる。自分の作ったワールドで大人が素で楽しんでたらこれはうれしいですよ。ものすごい自己肯定感につながります」

子どもから大人が「学ばされる」ことも

――親御さんのアドバイスは、そんな簡単そうなことでいいんですか?

「こういった過程で得た『自己肯定感』や『達成感』はかけがえのないものです。

今の子どもたちにたりないのは没入や夢中ということ。毎日自由が少なくて『何時になったら塾に行かなきゃいけない』『何時になったらごはんを食べなきゃいけない』と、自由な時間と空間がほぼないんです。だから自立心が育たない。

たとえば登校時に服を選ぶこと。ついつい親は『これ着なさい』って選んじゃう。親が選べば10秒ですむけれど、子どもに任せると3分はかかっちゃう。この3分間が我慢できない。しかしそのことによって子どもたちの自己判断能力や情報収集能力の成長の機会を親が奪っているのです。

子どもたちはこの3分という時間を使って『天気』「『気温』『クローゼット内の状況』などから『靴はなにをはくべきか』『傘は必要か』『服にフードはあった方がいいか』『上に一枚羽織るべきか』などを判断する。そして、その後自分の判断で暑さ寒さなどを回避できたという成功体験を得ることができる。大人はただの2分50秒のために、このすべてを奪っているんです。

『Minecraftカップ』では子どもたちに世界観や価値観を問う大会を心がけています。子どもたちはそれに充分答えてくれています。大人が邪魔しなければ子どもたちは育ちます。マイクラには最低限の安心と安全は確保されています。この冬休み、マイクラの自由空間を使って子どもたちに自由な時間を与えてあげてください」

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