超格差婚を経て生涯添い遂げた、昭和の大女優・高峰秀子さん(1924年生まれ享年86)と脚本家の松山善三さん(1925年生まれ享年91)。そんなふたりの愛情物語を、養女として身近で見てきた文筆家の斎藤明美さんが一冊の本『ふたり~救われた女と救った男』にまとめました。ここでは、高峰秀子さんの知られざる料理の腕前と、最愛の夫・松山善三さんとのエピソードなどを教えてもらいました。

高峰秀子さんと夫
女優・高峰秀子さんの料理にまつわるエピソード、最愛の夫との関係性とは?(撮影:秋山庄太郎)
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大女優にして料理も一流だった高峰秀子さん

2024年は、日本映画史に残る偉大な女優、高峰秀子さんの生誕100年の年に当たります。一世を風靡した映画女優というと、きらびやかな印象をもつかもしれませんが、じつは多くの苦悩を抱えていました。それを救ったのは、当時貧しい助監督に過ぎなかった松山善三さん。

その後ふたりは結ばれ、生涯を添い遂げることになります。そんな、ふたりの出会いから56年の愛情物語を最も身近で見てきたのが、ふたりの養女、斎藤明美さん。高峰秀子さんと料理にまつわるエピソードを教えてもらいました。

――斎藤さんから見た、高峰秀子さんの料理の腕前は?

斎藤明美さん(以下、斎藤):抜群! 絶品! あぁ、思い出しただけでヨダレが出そう。

――うらやましい! 大女優にして、料理の腕も一流だったのですね。斎藤さんがこの季節(11月)に食べたくなる、高峰さんのお料理はありますか?

斎藤:もちろんたくさんあります。鍋は、カキ鍋、中華鍋(レタスを煮ていたのは覚えているが、あとなにが入っていたのか忘れた。が、おいしかった)、炊き込みご飯も絶品。ショウガとニンジンをものすごく小さいみじん切りにしたのが入っているだけですが、高峰のだしでおいしく、見た目もきれいでした。タケノコご飯は茶色でなく白かったのに、味がしっかりついていた。あとは栗ご飯など、ほかにも書ききれないほどあります。

――ため息しか出ません。季節の食材を使った、家庭的なお料理ばかりですね。そのほか、たとえば定番の一品など、高峰さんがつくるもので、お好きなお料理はありましたか?

斎藤:卵焼きは季節を問わず、年じゅうつくってくれたのですが、ものすごくものすごく、おいしかった!

――2回言いましたね! ああうらやましい! 本当にお料理上手だったのですね。

斎藤:高峰の料理はサラダ以外、温かい料理がほとんど。できたてだったので、11月に限らず、いつもおいしかった。

――なるほど。つくりおきや、買った総菜などに頼らずに、いつでも、松山さんや斎藤さんに、最高のお料理をつくっていたのですね。主婦としての高峰さんのすばらしさや、高峰さんがご家族をどれほど愛していたか、伝わるエピソードですね。