年齢を重ねる、働き方というのを見直す人が多くいます。かつて会社員として働いていたな中道あんさんも、現在は起業家として数多くの書籍を出したり、活躍しています。そんな中道さんもかつては悩んだ末に独立をしたといいます。そこに至るまでのことを語ってもらいました。
すべての画像を見る(全2枚)50代で起業を決めた。そこに至るまでを振り返って
今でこそ「好きなことで自由に稼ぐ」生活を送っていますが、ここに至るまでの道のりは決して平坦なものではありませんでした。起業という選択肢を考えるようになったのは、働くなかで「本当にこのままでいいのか?」という問いが頭を離れなくなったからです。
時折、車で以前勤めていた会社の前を通りますが、よくこんな遠いところまで自転車をこいで通っていたものだと感心します。よくもまぁ、10年間も事故にも遭わず幹線道路を30分以上漕いでいたものです。電車やバスが苦手というのもあったのですが、自転車通勤でも交通費が支給されるので、節約の意味もあり続けていました。
お金については、収入の範囲内でいかに支出を振り分けするのか、給料が入った瞬間がピークで、そこからいかに減らさずに暮らすかを考えていました。つまり、残高をみる生活をしていたのです。
このように、当時54歳の私は、今日一日を無難にこなすだけの毎日でした。3年後、5年後、10年後の自分を想像すると、いま以上に能力が上がることはなく、これからはできないことが増えていくんだろうなと安易に想像できました。
表向きは順風満帆でしたが、心のどこかでは「自分が枯れていく」とうすうす感じていました。それは、悲観というよりは恐怖でした。そんな状態でも、会社にすがっていくしかない自分を惨めだと思ったのです。
「自由」とは自分で選ぶことだと気づいた
ブログで50代の生き方を発信することで、知見が深まり自分の可能性を感じられるように。「もっと自分らしく生きたい」という思いは、次第に強くなっていきました。そして、その感情がピークに達したとき、あることに気づいたのです。
その気づきとは、「自由は与えられるものではなく、自分で選び取るもの」ということです。これまで職場では「自由にさせてもらう」ことを期待していましたが、会社という組織では自分の都合のいいようにはいきません。それなら、自分で選べばいい。自分が大事にしたい価値観を基準に、働き方や生き方を決めていけばいい。それが、私にとって「起業」という選択でした。
起業…そんなことして大丈夫なのか?
昨今、シニア世代の起業が流行っていますが、「なにから始めたらいいのか分からない」という悩みもよく聞きます。まず、はじめに覚悟を決めることです。「なにで起業するか」という方法は後からでいい、いちばん大事なのは腹の底から「やる!」と決めることです。
私が、右も左も分からない、勉強すらしていない起業の道へあっさりと進めたのは、根拠のない自信でした。その自信は「私ならできる、成功する」という意味のものではなく、これまでの人生を振り返ったなかにあります。
54年の人生には、さまざまなピンチがあり、大変なこともありましたが、結局のところ、今こうして楽しく生きている。なんだかんだあっても「きっと自分は大丈夫なんだ、これからも…」と確信しました。つまり、「起業に成功しようが失敗しようが、どっちでも自分は大丈夫なんだ」というのを、どこまで信じられるかでした。
ただ、私はプライドが高いので「失敗したら笑われる」というのを気にはしていましたが、「人の噂も七十五日」だと思って、その間を辛抱すればいいと考えるようにしました。今は、笑われることすら平気になっています。