女優・川上麻衣子さんの暮らしのエッセー。 一般社団法人「ねこと今日」の理事長を務め、愛猫家としても知られる川上さんが、猫のこと、50代の暮らしのこと、食のこと、出生地でありその後も定期的に訪れるスウェーデンのことなどを写真と文章でつづります。今回は「浴衣の着こなし」について。川上さん流・大人の浴衣のポイントを詳しく語ります。

猫とフィーカ
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フィーカ:fikaはスウェーデン語でコーヒーブレイクのこと

年を重ねたからこそ着物や浴衣を着たい

浴衣を着る川上麻衣子さん
浴衣を着る川上麻衣子さん

ここのところ、着物を着る機会が一段と増えました。それなりの年齢になったからこそのことだと実感しています。

結婚式やとくに形式ばったお披露目の場ではないところで、さりげなく着物を着こなせるのがなんといっても憧れです。そのためにはなにはともあれ、「自分で着物を着る」ことができなければ始まりません。

私の場合、人の手を借りずに着られるようになったのは30代になった頃だったと記憶しています。女優という職業柄、時代劇や、舞台などで着物を着る機会は多いのですが意外と自分で着るというのはハードルが高いものです。

着物を着る川上麻衣子さん
時代劇撮影のひとコマ

逆にいうと、女優だからこそ、ベテランの着付け師さんが見事に着せてくれることもあって、自分では着られない人も珍しくはありません。しかも芝居の世界の着物は、特別な着こなしが多いのも特徴です。まして、背中の帯がどう結ばれているかなど知る余地もありません。

着付け教室に飛び込んではみたものの…

着物の川上麻衣子さん
前川清さん主催の舞台にて

かくいう私自身も、10代の頃から時代劇で、町娘を演じることは多く、当時は怖いと言われていた京都の撮影所で「麻衣子ちゃんはお姫さんだから、なーんにもでけへんのやなぁー」なんて言われて肩身が狭ーい思いをしたものです。

そんな嫌味が早いうちから突き刺さっていましたから、自分で着物を着られるようになることは、大人の女になるための必須の条件としていつも頭にありました。

しかしそうはいっても、なかなかに道のりは長いものであったのも事実です。飛び入りで着付け教室に入ったりもしましたが、教室によっては、独自に開発した襦袢(じゅばん)などそろえるだけで、結局活用できずに無駄にしてしまったものもあります。

今思うと、着物初心者の頃に必要だったのは「頭で理解してから着る」派なのか、あるいは、「手で覚えてから理解する」派なのか。自分がそのどちらに属しているかを考えると、着物の世界に入りやすかったのかもしれません。

着物に興味があるならまずは「浴衣」から

浴衣で笑顔の川上麻衣子さん

私の場合は前者の「頭で理解してから着る」派だということは、覚えていく過程で気づいたことです。

この着物の着こなし術と楽しみ方はまた別の機会にじっくりとお伝えしようと思うのですが、もしこれから着物に挑戦したいと思っている方には、ぜひともこの暑いシーズンに浴衣から始めることをおすすめします。

今年の夏もまだまだ暑い日は続きそうですので9月でもまだ十分浴衣で過ごせます。

この浴衣をちょっと粋に着こなす工夫から始めれば、着物へのステップは帯の問題だけとなります。その帯にしても今は「作り帯」が簡単に手に入るので、浴衣を着こなせれば思いの外、着物への道はすぐそこです。