次の100年も快適に使えるようにスマート化
すべての画像を見る(全18枚)次は2階へ。和室だった2階は、住居スペースとして使われていました。既存の桐(きり)の箪笥(たんす)は、一度部品を外してメンテナンスしたうえで、日に焼けて黒くなっていた部分の色に合わせて全体を塗装。右側のくぼんだ部分には仏壇があったそう。天袋は襖(ふすま)紙を貼り替え、間接照明を設置しました。
板坂:住居だった2階にあった桐の箪笥は、部分的に紫外線を受けて黒くなっていたので、それに合わせて調色して塗装しました。扉をあけると中の棚が見えますが、本来はその色だったと思います。
田中:日焼けした部分に合わせているんですね。すごく自然で、木の感じも生かされていていいですね。引き出しの動きもめっちゃスムーズ。こういう年代物の箪笥って引き出しの滑りが悪くて、ちょっとあけにくかったりしますよね。
板坂:一度工場に持って行ってメンテナンスしてもらいましたから。2階の天井は、一部は見事な小屋組みを現しにしていますが、構造材を追加した部分は張り替えています。土壁や腰壁はすべてやり直し、建具は大正時代の古民家で使われていたものを使用しました。建物と同じ時代のものを使うことで、できるだけもとの形に戻す作業をしたのです。
田中:よく見ると、もとの鴨居(かもい)の位置はすごく低いですね!
板坂:もとのままだと鴨居が低すぎて、現代人には不便ですから。建具も継ぎ足してサイズを調整しています。
田中:なるほど。ボクのような大きな人間でもぶつからないように調整されていて、ありがたいです。
板坂:設計事務所は新しい家をつくるのが仕事ですが、今回のリノベーションは建築文化へのお礼の気持ちも込めていて、いいものを残しつつ、次の世代につないでいきたいと考えました。じつは、この建物はスマートホーム化していて、建物に入って1階のスピーカーに「ただいま」と言うと、照明やエアコンがつくようになっています。出かけるときは、「行ってきます」というと、全部消える。スマホでスイッチのオンオフもできるんです。
田中:すごいハイテク! ボクなんか、「ヘイsiri、今日の気温は?」くらいしか聞いたことがありません。
板坂:古い建物をそのまま100年後に持っていくのは、無理があります。エアコンも当然必要ですし、照明もLEDにする必要があります。次の100年も快適に使っていくためには、それらをリモートで自由自在に操作できたり、鍵を持っていなくてもあけ閉めできるようなシステムが大切になってきます。
田中:具体的にはどんなシステムを入れればいいんですか?
板坂:小さな機器を後づけするだけなので、簡単です。監視カメラなどのセキュリティも、スマホですべてコントロール可能。時代は変わりましたね。
リンクジャパンが開発したIoTプラットフォーム「HomeLink」を採用。スマホや声で空調、照明などの操作ができるので、各部屋にスイッチを設置する必要がなく、1か所にまとめることが可能になりました。各フロアの目立たない場所に設置されているため、超ハイテクでありながら、古民家ならではの趣ある雰囲気も保つことができています。
各部屋にカメラを設置しており、セキュリティ対策も万全。別の場所にあるメインオフィスからもチェックできます。
アプリを入れれば、スマホからエアコン、照明、鍵、カメラなどの管理&操作が可能。音声操作にも対応しています。