ESSEonlineに掲載された記事のなかから、5月に読みたいベストヒット記事をピックアップ!

バンギャル(ヴィジュアル系バンドのファンの総称)として友情を育んできた、ライターの藤谷千明さんと、漫画家の蟹めんまさん。老後について一緒に考えたルポ&エッセイ『バンギャルちゃんの老後 オタクのための(こわくない!)老後を考えてみた』(ホーム社刊)を出版しました。ここでは、アラフォーのおふたりが介護士の資格を取り、そこで学んだこと、現場で感じたことなどについて語ってもらいました。

※記事の初出は2023年5月。年齢を含め内容は執筆時の状況です。

“推し”の存在は、生きるエネルギーになる。『バンギャルちゃんの老後』インタビュー

共著『バンギャルちゃんの老後』の中で、介護初任者研修の資格を取ったことを明かしているおふたり。これはかつて「介護ヘルパー2級」と言われていたもので、現場で働く際に、最低限必要とされるもの。
資格取得の理由を、めんまさんは「祖父の介護経験があったこと」、藤谷さんは「コロナ禍でライブ取材の仕事が減り、収入の間口を広げる必要を感じた」とされています。

介護の現場では40代は「若手」

藤谷さん(以下・藤谷):私の場合、今も週に2日ほど訪問介護のヘルパーとして働いていますが、資格取得のための勉強中から、視野が広がった感覚がありました。

蟹めんまさん(以下・めんま):そう。単純に仕事の選択肢が広がるのはいいことですし、同じ資格取得仲間には、セカンドキャリアとして介護職を選び、学ばれている方もたくさんいて。あとは介護の世界は、50代、60代で資格を取られる方もたくさんいるので、アラフォーは“若い子”枠だったのも驚きでした。今は介護の仕事はしていませんが、それでも週に2回は、資格学校を通じて求人情報のメールがくるのが、フリーランスの身にとっては精神安定になりますね(笑)。

「手伝うよ」はNGワード。それが知れただけでも、介護の資格を取った意味があった!

医療介護職と趣味
介護職は趣味と両立しやすい
すべての画像を見る(全3枚)

ーー実際に資格を取り、おふたりはそれぞれ、こんなことを感じているそう。

藤谷:私は、訪問介護で身の回りのケアや掃除などをしていますが、各家庭によってお世話をする人の事情や関わり方が全然違う現実も知りました。“介護”とひとくくりにすることの難しさも感じています。

めんま:身にしみて考えさせられたのが、ケアに携わる家族の方への声がけ。「手伝うよ」とか「なにかあったら言ってね」というのはNGワードのようです。これは育児でも同じだと思うのですが、「手伝うよ」=「あなたが主体だから」と、責任を押しつけているのと同じだと。何気なく放ちがちな言葉だと思うので、学べてよかったと思います。

高齢母との同居。本人は無自覚だが、生活の質は下がっていた

マンガ

ーーめんまさんは現在、高齢者の年齢に該当するお母さまと実家で同居中です。

めんま:父親が急逝し、そのあと母親がケガをしてしまい…そのままなし崩し的に同居をしています。世代が違う親の暮らしを見て驚いたのは、年齢とともに、QOL(生活の質)が下がっていたこと。

たとえば、壊れた物干し竿などを、そのままどうにかして使おうとしていました。私たち世代ならば、ネットで新しいものを買えますが、そもそもネットをうまく使いこなせていなかったりする。それから怪しい勧誘のチラシもたくさん投げ込まれていて。元気なうちは笑いごとですませられるものの、判断力が落ちてきた場合には、そばにだれかいないとだまされてしまうのでは? とも感じました。