ペットの柴犬の写真をX(旧Twitter)に投稿し続け、その自然体のかわいさが人気となっている@inu_10kg。ESSEonlineでは、飼い主で写真家の北田瑞絵さんが、「犬」と家族の日々をつづっていきます。第68回は「犬と親戚のおじさんとおばさんの距離感」についてです。

犬の催促度で分かる、おじさんとの親密さ

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3月後半のお彼岸にあたって親戚がお墓参りやお供えをしにやってきてくれた。うちは親戚が多くにぎやかな一族でいろんな楽しい人がいる。そのなかには犬と幾度となく顔を合わせても吠えられる人がいる一方で、犬が撫でられたがるほどに懐かれている人がいる。

もともと犬は撫でられたがりで、家族には隙あらば撫でを催促し、そして撫でられ始めると長いのだ。催促は、私が背中なり後頭部なりを撫でている手を止めて犬の満足度に達していない場合に行われる。それは前足で私の身体をかいたり、寝転んでおなかを見せたり、いろんな催促の仕方がある。たまに犬が催促をしなくなるまで撫で続けると、30分は撫でている。

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inubot回覧板の書籍用に書き下ろした、犬をはちゃめちゃにかわいがってくれるおじさんの話を読んでくれた方はいるだろうか。おじさんは自分の知り合いから注文を受けて、母が栽培している果物を販売してくれている。毎年秋になると私の友人も私に連絡してくれて、うちの柿を箱で買ってくれたり、妹も職場で注文を受けたりと、市場で売るだけではなく個人間でのやり取りも多い。

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おじさんはそういった用事もあって、よく来てくれるというのもあるが、それにしても犬が懐いているのだ。会う頻度の高さだけによる仲のよさではないと思う。

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先日もおじさんが母に用事があり、来てくれた。いつもクルマで来るが、さすがにクルマのエンジン音や駐車の癖では犬もだれかは判別できない。庭でのんびり過ごしていた犬は、庭からは見通せないガレージにクルマが止まった音が聞こえたらすぐさま警戒体制に入った。

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「だれやー! ウォン! ウォンウォーン!」とまくし立てるように吠える。まだ見ぬ外敵を威嚇するのだった。

だけど、向こうから「なによ~吠えてくれやんでええよ~」と犬にやわらかく声をかけるおじさんが現れたら、とたんに犬は安堵をあらわにした。

力が入っていた身体は緩められて、キッと釣り上がっていた双眼はまぁるく穏やかになる。次には「こっち来ーい! ワウッ! ワウー!!」と先ほどとはまったく違う、甘やかな吠え色(声色的な)で呼びかけるのだった。

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おじさんは呆れたような口ぶりで「なんや~そう呼ぶなよ~」と言いながら、仕方なさそうに、しかし満面の笑みを浮かべて、犬のもとに足を運んでくれる。

おじさんが自分のもとに歩みを進めているのがわかると、犬はその場でバタバタ足踏みをしたりくるりと回転したり、タップダンスをしとる。ほんで回っておじさんに背中を向ければ、地面に尻もちをついた。

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おじさんは膝を屈めながら「今日もわしに撫でろ言うとるわ」と笑った。タップちゃうくて撫でられる体勢を整えていた。犬はおじさんを呼び出すのに成功し、万全の準備を経て、さぁどこからでも撫でよと待ち望んでいる。「犬、準備ええな」と私もつられて笑った。

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おじさんは犬の顔を覆ってしまいそうな大きな手で、すこし白髪が混じってきた犬の頭から背中をやさしく往復させる。名前を呼びながら「よっしゃよっしゃ」となにかを確認するように、何度も何度も。

しばらくして「わし行かなあかんところあるねん、またよ」とおじさんが帰ろうとすると、先ほどまで寝ていた毛布をくわえて勢いよく振り回す。おじさんを引き止めたい! その一心で!

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「ブンッ! ブンッ!」と毛布が風を切る音がする。今度はまるで野球部の素振り。

そしたらおじさんもまた「なになに、も~」と踵を返して、犬のもとに戻ってきてくれるのだ。おじさん本人には言わへんけど、めっちゃうれしそう。

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おじさんが戻ってきてくれたら、犬はフンスッ! と鼻息を吐いて、ふたたび撫でられる体勢に入る。ほんまに相思相愛のふたりよなぁ。