「人生100年時代」と言われる今、年齢を重ねても仕事を続ける人が増えています。78歳の今も、著述業と薬剤師、“二足のわらじ”で働き続ける、生活研究家の阿部絢子さんもそのひとり。自身の就職奮闘記と併せて60代以降の“これから世代”が外に出て働くメリットや仕事探しのコツについて話を伺いました。
年齢を重ねても仕事をする意義とは?
高齢になっても働き続けるかどうかについて、阿部絢子さんは「年齢を重ねても仕事をして社会とつながることが大切」と話します。
「高齢になって無理して働かなくていいのではと、思う人もいるかもしれません。でも、仕事を通じて社会とつながり、人の役に立っているという実感はいくつになっても大事なこと。それにもちろん、働くことで得られる収入も大きな魅力です」(阿部絢子さん、以下同)
友人と出かけたり、趣味や習い事をしたり、人生をもっともっと楽しむために、年金をもらいながら、短時間でも自分のペースで働く人が多いのだそう。
「働きたいと思ったら、シニア向けの求人サイトなどで仕事を探してみましょう。ずっと専業主婦だった人も、育児や家事で身につけた技術が役立つ仕事は多いもの。最初は慣れなくて大変でも、続けるうちにわからないことを覚える楽しさ、スキルを身につける喜びが得られて、新しい世界が広がりますよ」
阿部さんの60代からの就職奮闘記
ここでは、63歳で再就職先を探すことになった阿部さんが、以前取得した薬剤師として働き始め、仕事を軌道にのせるまでの奮闘記をご紹介します。
●人員整理で突然の退職勧告
百貨店の消費者相談室で30年働いてきた阿部さんが、人員整理で退職勧告を受けたのは63歳のとき。
「もっと働きたかったから、学生時代に取得した薬剤師の免許を引っぱり出して、ドラッグストアに応募。初心者であることも包み隠さず伝えて用されました。意欲が認められたのだと思います」
●調剤、PC、慣れない作業で失敗の連続
仕事は市販薬の販売「調剤がないから大丈夫」と思ったそうですが、大誤算がレジの操作。「何度教わっても覚えられなくて。個別指導をお願いしてやっと慣れてきたら、レジがまた新しくなって(笑)」。
その後、パート先が合併した関係で調剤も担当することに。
「あきらめるのが悔しくてがんばりましたが、パソコン作業が多く、とにかく時間がかかる。身に覚えのないミスの濡れ衣を着せられて人間関係がいやになり、辞めました」
●人間関係の居心地いい職場にご縁が
その後、薬剤師資格さえあればいいラクな職場で働いたものの、「おもしろくない」と退職。
「最後にたどり着いたのが、今の老舗調剤薬局の仕事です。先輩の管理薬剤師は私と同年代で、尊敬できる存在。パソコンは相変わらず苦手ですが、前の職場で試行錯誤した経験が今になって役立っています」