子どもが歩き始めたり、おしゃべりを始める頃になると、早くも気になってくるのが「習い事」。
「お受験ジャーナリスト」として、子どもの勉強や進学について多数の著作のある末木佐知さんに、習い事を始める時期や続けるコツについて詳しく教えていただきました。
習い事を始める時期別・気をつけるべきこと
「そろそろ英語のお教室でも行かないと、遅いよね?」という会話を、表参道のカフェで耳にしました。
お隣の子が英語教室に通っていると聞くと「どうしよう…!」と不安になるのが普通の感情です。
本当は、「まだ早いんじゃないの?」なんて思っていても、友達の子どもが発音のよい英語で「アッポー(アップル)」なんて言っているのを聞くと焦ります。
習い事は、早く始めないと手遅れになるのでしょうか?
すべての画像を見る(全2枚)●乳幼児期の習い事
乳幼児期の習い事は、基本的には幼児教室といわれるもので、右脳やIQを伸ばすとうたっているものがメインです。
「3歳までに耳に慣れさせよう!」なんて英語を始める人も多いです。
そのほか、ベビースイミングやリトミックなども。
しかし、この時期は子どもに意志や決定権はありません。
ですから、ここはママたちのコミュニケーションの場と割りきるのがいいのです。
この時期の習い事は、子どもに「成果」を求めてはいけません。
また、隣の子がやっているからと焦るのも禁物。
まだまだ、親子で遊んでいたい時期。
人とのコミュニケーションが大事な時期なので、親子で遊べる場所に出向いて行って、同じ歳の子どもたちと交流するくらいの気持ちで始めましょう。
●幼稚園に入る頃から、就学前
この時期になると、「子どもが将来その道を極めるためには、今から始めないと遅い!」という意識が。
スポーツだったら将来プロやオリンピックにつながるものをやらせてみるという人が多くみられます。
そのほか芸術系も同じことがいえます。
そして、ここまでくると、「成果」を期待してしまいます。
しかし、この時期の子どもが「あれをやりたい」と言ったとしても、過度の期待は禁物です。よく聞いてみると、なにを見せても楽しそうで「なんでもやりたい」と言うのがこの時期です。
子どもにとって、根拠はありません。好奇心のかたまりのような子どもは、すべてが楽しく見えるはずです。
●習い事を始めるときのコツ
就学前の習い事を選ぶコツとして、ひとつあげるとすれば、「3か月待たせる」です。
ある5歳のお子さんは、週7日なにかしらの習い事がはいっていました。お母さんに聞いてみると「これは、私が無理やりやらせてるんじゃないんですよ。娘がやりたいって言ったから」とのこと。
子どもがやりたいといったものをすべてやらせる必要はないのです。お金の方も続いてるのもすごいですが…。
じつは、習い事の本質は、本人が興味をもったことでないと伸びない、続かないということ。何千人の親子を見てきて実感しました。
だからこそ、3か月待たせてそのほかにもいろいろなものに目をふれさせ、ときには体験教室などに参加して、本人の反応を見てみることが大切です。
3か月たっても気持ちが変わらなければと、待たせたことで子どもはより気持ちが高まっています。
そのモチベーションから始めると長続きし、伸びる可能性があります。
●習い事を続ける上での注意点
(1)長続きさせる。簡単にやめさせない子どもは、慣れてきたり、飽きたり、自分ができなかったり、だれかに負けたりなど、いろいろな理由で習い事をやめようとします。
やめたい理由として親に言うのが、「先生がいやだから」。そんなとき、いきなり先生を変えてくれと教室側に訴えると「モンスター」と見なされてしまいます。
先生側の意見も聞いた上で、子どもとも話し合いましょう。
3歳くらいからそんなことを言う知恵が発達してきます。きちんと両者の意見を聞いて対処しましょう。「子どもに知恵がついてちょっと成長したな」とほほえましく思えるくらいの余裕があるといいですよね。
(2)成果を期待しない。結果を求めないアメリカの親は、子どもがスイミングスクールに行くときに、「楽しんで!」と言って送り出し、帰ってきたら「楽しかった?」と聞くといいます。
日本の場合は、「今日は検定試験だからがんばってね!」と送り出し「合格した?」と聞くというたとえがあります。
英語教室に行かせている保護者にも「あの教室では全然しゃべれるようにならないのよ。変えようかしら?」という方が多くいます。
幼児期の英語は、本来、「英語に慣れる」「外国人という存在を知る」「日本語以外の言語を知る」ということ。
これが今後、学校で勉強していくうちに、「話せる」に結びつきます。
すぐに「成果」を求めてはいけないのです。
そしてなによりも大事なのは、「人と比べない!」です。わかっているけどできないものですよね。これから子育てに一生つきまとってくるのが「人と比べてしまう自分」がいること。子育ての永遠のテーマであり課題です。
絶対に比べないなんてできません。だからそういうときに「人と比べない!」というワードを思い出して、気をつける。その繰り返しを今後、何十何百回とやることになります。
そうやって子どもも大人も成長していくのです。