仕事、家事、子育てに追われ、忙しい毎日を送る人が増えている昨今。「料理が苦痛」という声も聞かれるようになりました。そこで、長年にわたって家庭でつくりやすいレシピを提案。ご自身も忙しい日々のなかで、息子さんが高校を卒業するまでお弁当づくりをしてきた料理家・笠原将弘さんと一緒に、どうすれば料理が苦痛でなくなるのかをじっくり考えてみました。

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下手でも、忙しくても料理とうまくつき合っていく方法はある

笠原将弘さん
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予約のとれない和食屋「賛否両論」店主の笠原将弘さん。2012年に奥様を亡くされてからは、周囲のサポートを受けつつ、息子さんが高校を卒業するまでお弁当づくりをするなど、シングルで3人の子育てをしてきました。

そんな笠原さんが考える、忙しい日々でも料理とうまくつき合っていく方法などについて伺いました。

●「料理がなぜ苦痛なのか」考えてみる

――料理に対する向き合い方は人それぞれですが、「苦痛」と感じている人に対して、どのようなアドバイスが考えられるでしょうか?

笠原将弘さん(以下、笠原):「料理が苦痛」と言っても、その原因はいろいろだと思うんですよね。なので、そのあたりから掘り下げてみましょうか? まず、料理が好きだし、興味もあるけど、下手だから苦痛という場合。こういう人には、いろいろな料理に手を出さず、5品を繰り返しつくってみてほしい。

なるべく味や調理法が違う料理がいいから、肉ジャガ、カレー、鶏のから揚げ、マーボー豆腐、サバのみそ煮あたりがいいかな。これをしつこく徹底的につくっていけば、火の入れ方や味の加減がだんだんわかってきて、必ず料理の腕が上がるはず。毎回新しい料理にチャレンジするのもいいけど、まずは成功体験を積み重ねて自分のレパートリーを着実に増やすことが、自信につながると思いますよ。

――世の中にレシピは五万とあふれていますが、最初は5品でいいと思えば、気楽にトライできそうですね。料理が「苦痛」から「好き」へと、少しずつ変わっていけそうな気がします。

笠原将弘さん

笠原:次に、わりとよく聞くのが、「だれもほめてくれない」というパターン。せっかくつくっても、食べる人の反応がなかったり、つくってもらうのが当たり前だと思って食べられると、こちらのモチベーションは下がってしまいますよね。料理人がこの世界を目指すきっかけになったできごととしてよく挙げるのが、「料理をつくってほめられたこと」なんです。

そのときのうれしかった気持ちが忘れられないという話は、本当によく聞きますね。だれかに「おいしいね」と言われると、料理が苦痛だと思っていたことすら忘れてしまいますから。だから、これはもう一緒に食べる家族の方にぜひご協力していただきたい。そして、こちらもときには家族の好物をつくって、お互いに楽しい関係をつくれたらいちばんいいですよね。

――毎日とはいかなくても、ときどき家族の好物をつくるというのは、お互いにポジティブになれるいい解決策ですね。

笠原:あと考えられるのは、料理にまったく興味がないというパターン。これはもう、はっきり言います。料理に手を出さなくてもオッケーです。僕のことで置き換えると、車にまったく興味がなんですよ。いくらみんなから「乗らないともったいないよ」とさんざん言われても、まったくその気にならない。車に乗って事故を起こしたらと思うと怖いし、お酒も飲めないし、維持費も高いし(笑)。

同じように、ゴルフもそうなんです。いろんな人から誘ってもらったり、「ゴルフはサイコーだぞ」「リフレッシュできるぞ」なんてよく言われますが、自分自身まったくやりたいと思わないので、これはもう仕方がない。だから、料理に興味がないという人は、潔く、買うなり、外食をするなりしたらいいと思います。

――だれにだって、興味がないものはありますよね。笠原さんは、車とゴルフにまったく興味がないんですね(笑)。