●自分にできる限りのことをやり尽くしたい
すべての画像を見る(全7枚)壮大な冒険の物語である「西遊記」。それにちなんで、愛之助さんにとってこれまででいちばんの冒険や挑戦について尋ねると、「今の自分の人生です」ときっぱり。「元々歌舞伎界に生まれた人間ではないので、本当に運がよかったのかなと思います」と言い、これまでを振り返ってくださいました。
「以前取材のときに、『45年前はなにをしていましたか?』と聞かれたのですが、45年前は僕がちょうど本名で役者になった頃。本当にたまたま松竹芸能のオーディションに受かって入れていただいた、という感じでした。元々僕の祖父は、奄美大島の徳之島生まれ。そこから大阪へ出て、船のモーターのスクリューをつくる会社を経営していました。それを父が継いで、僕はそこに生まれたので、もしかしたら今プロペラをつくる人になっていたか、徳之島に帰って漁業や農業をしていたかもしれない。そういう立場の人間だからこそできるような冒険はしていると思います」
現在の八面六臂の活躍には、そんな愛之助さんだからこその思いもあるそうで…。
「これまで、師匠である十三代目片岡仁左衛門、二代目片岡秀太郎の背中を見てやってきました。恩返しとして自分になにができるかを考えると、やっぱり師匠たちが守ってきた上方の歌舞伎の火を絶やさないことなのかな、と。そのためには、お芝居をしてお客様が来てくださることがいちばん大事。そこで、多くの人に興味を持ってもらえるんだろう、と考えたときに、いろんな活動をしたほうがいいと思ったんです。現代劇やテレビ、映画に出させていただいたり、歌舞伎の新作をつくったり…。自分の許してもらえる環境の中で、できる限りのことをやり尽くさせていただいています」
●50代を迎えた今は、むしろやりたい役がない
そんな中で、50代を迎えられた愛之助さん。今と昔とで変わった点もあるそう。
「昔、やりたい役はなんですか? とよく聞かれたのですが、その当時はたくさんありました。あの役もこの役も、と。でも、実際30代になって自分が主役をやらせていただくようになると、お芝居は一人でできないんだなと改めて実感しました。
歌舞伎の場合、その月にその劇場にいるメンバーが決まっています。たとえばそのうちの1つの演目で、主役・片岡愛之助で、二番手、三番手、四番手の人が決まったときに、僕がチケットを買っていくなら、この人たちでどんなおもしろい芝居を観たいかなと考えるわけです。いかにそのメンバーでおもしろいものに挑戦するか、という方に意識が変わってきました。だから、今はむしろやりたい役や憧れの役というのはないんです」
●妻のつくる健康を意識したメニューが日々の助けに
歌舞伎に舞台に映像に、日々大忙しの愛之助さん。気になってしまうのが、ストレスが溜まってしまわないか? ということです。しかし、意外にも「ストレスのスの字もない」と言います。
「仕事が特殊だからかもしれませんが、舞台の上で、役者同士やお客様とのキャッチボールをして出しきって終わるので、もうカスカスになって帰っていますね(笑)。発散は舞台でしているので、ストレスはないです。性格もあるとは思うのですが、あまり引きずったりもせず、どんどんきり替えていきます」
そんな愛之助さんが日々の生活で意識していることは食。奥様の料理が愛之助さんの生活をサポートしてくれているそうです。
「健康を意識したメニューをつくってくれるので、本当に助かっています。僕はハンバーグを食べたい時期なら毎日ハンバーグを食べたい人なのですが、「なにがいい?」と聞かれたときに毎日ハンバーグと答えても、同じものはあまりつくってくれませんね。バランスよく、その方がいいんでしょうけど(笑)」
<公演情報>
日本テレビ開局70年記念舞台『西遊記』
脚本:マキノノゾミ
演出:堤 幸彦
出演:片岡愛之助 小池徹平 戸次重幸 加藤和樹 村井良大 藤岡真威人 中山美穂 松平 健 ほか
公演日程:大阪公演 2023年11月3日(金・祝)~5日(日)オリックス劇場
福岡公演 2023年11月10日(金)~23日(木・祝)博多座
名古屋公演 2023年12月27日(水)~2024年1月2日(火) 御園座
東京公演 2024年1月6日(土)~28日(日) 明治座
〈札幌上映会&スペシャルトーク〉
12月16日(土)・17日(日)カナモトホール(札幌市民ホール)
公式:saiyuki ntv.jp
企画・製作:日本テレビ