●デビューしても、パートはしばらく続けていた

寺地はるなさん
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そして、小説に挑戦してから2年。寺地さんが37歳のときに書いた『ビオレタ』が第4回ポプラ社小説新人賞を受賞して、晴れて小説家デビュー。年齢を重ねると、新しい道に進むことや、チャレンジすることに少し怖さが生じることもありますが、30代から小説に挑戦したことに対して、当時不安や怖さは感じなかったのでしょうか?

「たとえば、これがなにかの教室に通うとか、いろんな人に会ったり、教えられたりするものだったらもっと怖かったし、勇気が必要だったと思うんです。でも、小説はひとりで書くものだし、郵便で送るものだから不安はありませんでした

デビュー当時、息子さんは4歳。そのままパートはやめるかと思いきや、まだ生活していくには大変だったので、パートは続けていたそうです。

「その頃の記憶もないし、削るのは睡眠時間しかなかったので、そこを削って…とにかく大変でした。だから、育児と仕事が両立できていたかっていうと、できていなかったかも…。でも、子どもが小学校入学したときには、執筆の依頼とかも継続的にいただけるようになったので、パートはやめて、小説一本に絞りました。

でも、意外と時間があるから書けるというものでもないんですよ。私は、たっぷり暇があるから書けるっていうタイプではないし、家にいすぎると、ものごとを考えられなくなるんです。小説のテーマが浮かびやすいのは、人に会ったりとか、自分と異なる考え方に出くわしたとき。だから、忙しくてもなにかに関わっていた方が書くことはあるのかなって思います」

そう語る寺地さんに、デビュー前の作品について伺うと「笑うくらいへたくそでしたね」とひと言。そして、「『こう書けばよかったな』とか思うだろうし、誤植とか見つけたらショックで怖いから読まないようにしています」と苦笑いしながら教えてくれました。