●53歳、徐々に成長を感じられるように
すべての画像を見る(全6枚)挨拶しかできず、宿題が出たことも分からず、集合場所も指差し確認。まったく進歩が見えない自分に呆れながらも、少しずつなにを言われているのか掴めるようになり、「外国に住む」ことにも緊張がなくなってきました。例えしっかりと話せなくても、人柄や気持ちは通じ、徐々に「気が合いそう」と思える留学生仲間と一緒に遊びにいけるように。「この道をだれかと一緒に歩きたい」と思っていた学校帰りの坂道を、クラスメイトと一緒に歩けるようになったのは10か月目のことでした。
長期の留学は、心から語れる仲間が限られ、気持ちも健康も勉強もひとりで管理しなければなりません。そして、それは想像以上に大変なことでした。ネットで見る留学談などは楽しそうで明るい記事が多いですが、言語を学ぶ過程や海外生活の苦労を実感しました。私の場合は特に勉強方法が分らず、その「できない自分」を感じることでさらに自信を失い、気力も元気も日々欠けていきました。
それでも、日々小さな成功体験を数えるようにしています。汗びっしょりになりながら初めてカフェで注文できた喜びは今でも鮮明に覚えています。クラスメイトから食事に誘われ、使えそうな会話文をいっぱい書いて持って行ったメモは今でも残っています。ときに落ち込み、ときに涙し…。まさかこの歳になってこんなつらさをを感じることになるなんて…。
ただ、一日一日は必ず前進しています。迷った道も歩けるようになり、緊張した会話も笑顔で話せるようになり、50代になって自分の成長を感じられる日が来るとも思いませんでした。
●留学2年目の今、さらに新しい刺激を求めるように
現在、海外生活2年目に入り、拠点をマドリッドへ移しました。せっかくなら違う環境で生活し、また新しいスペインを吸収したい気持ちがあったからです。「この私がどうやって生きていくんだろう…」自分でも心配でしたが、何とか1年を過ごすことができました。相変らず勉強方法にもがき、生活の不安も常につきまといますが、ここにいるとなぜかその辛さも良い刺激に感じ、次第に居心地よくさえも感じてきたところです。
「だれにも迷惑をかけないように天国に行くこと」だけを思い描いていた1年半前。もう人生において新しいことにチャレンジすることはなく、このまま老後を迎えるんだと貯金の心配ばかりしていた私。今は、正直半年後や来年のことも分かりません。でも、将来プランが真っ白だからこそこれからいくらでも自分で自分の人生をデザインしていけるんだと思うと、ワクワクもします。
未だ多くの失敗を手探りで乗り越える毎日ですが、今日会話が通じたこと、何事もなく一日が過ごせたこと、ぐっすり眠れたこと、日本では感じなかった些細な「普通」がいちばんの幸せに感じる生活です。引き続き、海外で暮らす甘くてつらい等身大の姿を、ときおり日本にいた自分も重ねながら、お伝えさせていただきます。