まるで飛行機か宇宙船に乗って空を飛んでいるような気分になる、建築家の自邸を紹介。丘陵地の高台という敷地のメリットを存分に生かしたプランは見事です。3階のLDKには、水平方向に10mもの長さがある出窓が! 眺望は格別で、屋内にいるのを忘れてしまいそう。四季折々の景色を屋内に取り込む工夫の数々も紹介します。
すべての画像を見る(全25枚)住む人の心をつくる大きなスケールの眺望
都留さんの家 神奈川県 家族構成/夫50代 妻50代 長男16歳 長女13歳
設計/都留理子建築設計スタジオ
「右手のシラカシだけじゃなくて、この家が建った頃は左手に山桜の大きな木があって、左右の木が支えるツリーハウスのようだったんですよ」
LDKを貫く10mの出窓を前に、そんな話をしてくれるのは、建主でありこの家を設計した建築家の都留理子さんです。敷地が丘陵地の端に位置するため、北側の大きな出窓から見える家々を見下ろす眺めは、LDKにいながらにして、まるで空を飛んでいるかのよう。
間取りは1階に理子さんが主宰する設計事務所があり、2階が玄関と寝室、水回り、3階がLDK、4階に長男と長女の子ども部屋という構成です。特徴的なのがどの階層も間仕切りを必要最小限に抑えていること。
「夫婦ふたりだけのときに設計したので、家族の変化に対応できる区切らない家を心掛けました」(都留さん)。窓外の空気感まで取り込む大開口のLDKは、外の景色や間仕切りのない開放感が、そこで過ごす人の心にポジティブに働きかける作用があるようです。
「以前は仕事が忙しいと周りが見えなくなっていましたが、ここに住んでからはそんなことがなくなりました。家から見る景色って、住む人の心をつくっているのだと思います」(都留さん)。
思春期を迎えた長男と長女も家が好きだと口をそろえる都留さんの住まい。「子どもたちが不思議と固定観念に縛られずに育ってくれています」という都留さんの言葉が印象的でした。
家づくりでこだわったポイント
1.玄関を入った瞬間、目に飛び込んでくる眺望
玄関扉をあけた瞬間に目に飛び込んでくる景色の効果で、四角い筒状に抜けた空間かと錯覚する玄関ホール。左に寝室、右は水回り設備が収まります。
扉の取っ手を省いたのも、眺めを強調するのに一役買っています。
2.各地の花火も見える屋上テラス
建物の西側を占める屋上テラスはコンパクトながら、敷地の高さがより強調される場所。「遠くは昭和記念公園の花火まで、いろいろな場所の花火が見えるんですよ」と都留さん。夏は家族でバーベキューを楽しむのだそう。
3.10mもの長さがあるLDKの大きな出窓
「私的な心地よさよりも、だれもが心地よいと感じるに空間にしたかった」と都留さん。確かに10mの出窓は住宅という私的な空間より、図書館やギャラリーのアトリウムのような公共性すら感じさせてくれるスケールです。
4.生活感のない、白一色の空間
3階のLDKだけでなく2階と4階も白一色の主張を抑えた空間になっています。そのぶん、家々や木々の緑、空の青さなど窓外の色彩がより引き立つ仕掛けです。紺色のソファは空間の中でアクセントのように見えます。
5.抜群の眺望を約束する高台の敷地条件
眺望を楽しみたいという夫の要望と、事務所の利便性を考えて駅から近いことという都留さんの要望にかなったのがこの敷地。駅からの道は長い階段が難関ですが、「慣れればどうってことありません」と都留さん。
6.4階の南側開口部から光を取り込む階段
出窓は北側にあるため、直接的な採光は望めませんが、4階への階段正面には南側の開口部があり、ここから明るく日が差します。
「北側は順光の景色が楽しめますし、熱源になりにくいのでおすすめです」(都留さん)