2022年6月に交付された「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律改正」により、近い将来の家づくりにおいては、建主自身が省エネ基準適合義務を負うことに。そこで自身も省エネ基準をクリアした家を設計し暮らしている、東北芸術工科大学教授の三浦秀一さんのお宅をオジャマしました。実際に行っている8つのポイントを、ぜひ家づくりの参考に!

温度センサー
優れた断熱材と気密性のおかげで、外は寒くても室内は快適な温度に
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1.UA値の小さい断熱材を使う

断熱等級

現在断熱材には多くの種類があり、環境性能に優れたものや人体への影響の少ないものなど、その特徴はさまざま。

断熱材のカタログには熱伝導率や熱抵抗率が表記されていて、専門知識がなければ読み解くことは難しいのが実情です。肝心なのは、建築地の省エネ基準のUA値をクリアし、ZEHレベルまで引き上げること。ちなみに三浦さんの家はさらに上の等級6です。

●UA値【ゆーえーち】
壁や屋根、床からの熱の通りやすさを示した数値で「外皮平均熱貫流率」ともいいます。UA値が小さいほど断熱性能は高く、地域区分ごとに北海道などの0.46から鹿児島県などの0.87まで数値基準が掲げられています。

 

2.熱を通さない高性能な窓を採用

トリプルガラス

窓は住まいの中でもっとも多く熱を通す部分であり、省エネという観点では弱点ともいえます。しかし、窓の断熱性能は大きく向上しており、最新の樹脂アルミ複合サッシ+ダブルLow-Eガラスで熱貫流率2.33w/(㎡.K)、樹脂サッシ+アルゴンガス封入型トリプルLow-Eガラスのサッシだと1.60w/(㎡.K)と非常に低くなっています。

ちなみに100㎜のグラスウール断熱材が0.45w/(㎡.K)、アルミサッシ+単板ガラスで6.51w/(㎡.K)という数値です。

 

3.バルコニーは太陽光をコントロールできるよう工夫

床が取り外し式になっているバルコニー

三浦さんの住まいはバルコニーの床が取り外し式になっています。夏は床板を取りつけてバルコニー兼長い庇(ひさし)代わりにし、1階南面への日射を防ぎます。

 

冬の日差し

一方冬には1階に日射による熱を採り入れるためにバルコニーの床を取りはずし、庇がない状態にしています。寒い冬はバルコニーを使わないので、問題なし。日射による熱を建築の工夫によってコントロールしているわけです。

 

4.気密性を高める基礎断熱を行う

気密性を高める基礎断熱

昔ながらの家は床下の通風を確保するために基礎を上げ、床下に断熱材が敷き詰められています。しかし気密性が低い上、冬季には床下を冷気が通るために底冷えがすることが弱点でした。

そこで床下ではなく基礎の立ち上がり部分を断熱材で覆い、基礎からの熱の出入りを防ぐことで床下の温熱環境をコントロールし、さらに気密性を高めました。