現代の住まいに合わなくなった大きなタンスや空き家に残された家具や小物の数々。捨てるしかないと思われていたものに、新たな価値を見いだし、循環させるSDGsな取り組みをしている人がいます。「家‘s」代表の伊藤昌徳さんです。時事YouTuberのたかまつななさんが、古いものから新しい価値を生み出す、その仕組みについて聞きました。

「家‘s」代表の伊藤昌徳さん(左)とたかまつななさん(右)
「家‘s」代表の伊藤昌徳さん(左)とたかまつななさん(右)
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魅力的で使いたい「もの」が環境にいいというのが理想

アップサイクルした家具
アップサイクルされた家具

たかまつ:伊藤さんの事業のひとつが、アップサイクル(本来は捨てられるはずの製品に新たな価値を与えて再生すること)した家具のサブスクリプション事業です。古い家具に付加価値をつけて再び循環させるというアイデアは、どこから生まれたのでしょうか?

伊藤:縁あって富山県高岡市に移住し、ゲストハウス開業のために古民家をリノベーションしたんです。そのとき、家具を大量に捨ててしまって。それが、ずっと胸に引っかかっていたんです。その後も地域の高齢者から、「要らない家具が捨てるに捨てられない」という声をよく耳にして。なにかできないかなと思い、家具の修理や再生を始めたんです。

たかまつ:それも単なる修繕ではなく、デザイン性にこだわっていますよね。

伊藤:環境にいいというだけで利用してもらうのは正直、難しい。理想はものとして魅力的で使ってみたいと思われ、結果、それが環境につながることです。古きよきものを再生するため、アートの力をお借りている感じです。

たかまつ:サブスクリプションで広く利用してもらうというのも新しいです。

伊藤:デザイン性が高くても、100年前のタンスを家具として家に入れるのはハードルが高い。サブスクなら手軽に使っていただくこともできますから。

たかまつ:利用されているのはどういう方が多いんですか?

伊藤:個人だと、部屋の雰囲気を変えるため3か月使ってみるという方や、駐在中の限られた期間、おもしろい家具を使いたいという海外の方などですね。他方で、企業がイベントで使ったり、SDGsの啓発のために社内に展示したり、B2Bのニーズも高いんです。商業施設やホテルなど、非日常を演出する場所で思っていた以上の需要がありました。

たかまつ:それはどうしてですか?

伊藤:SDGsの流れもあって、ストーリーがあるものを置きたいという企業が多いんです。たとえば、エシカルをうたいながら、リサイクルできない合板の什器を使っていたらブランドコンセプトと乖離してしまいますよね。