●寝たきりになったタルボに気持ちが揺らぐ

6日、私は仕事があって外出。この日からタルボは寝たきりになりました。

少しは水を飲みましたが、もうえさもチュールも受けつけません。おしっこすらもほとんど出なくなり、下にしいたシートにうっすらしみている程度。それでもときどき頭をあげて、こちらを見ることがあり、1時間おきくらいに態勢を変えて少しなでてやったりしました。

7日、タルボはもうほとんど動かずに、じっと寝ていました。それでもジタバタすることがあったので、水を飲ませてみたりしましたが、ぺろっと舌を出すのがせいぜいでした。

「やっぱり点滴をしようか…」。何度も何度も思いました。もしかしたらここからでもまだ生きてくれるかもしれない。ここで諦めてしまっていいんだろうか。

逡巡する私に、母は、「もうがんばらせなくていい」と言いました。同じく老いた母がいうのなら、それがいいのだろう、と思いました。

8日、妹がやってきました。もうタルボはひたすらじっとして動きませんでした。ときどき体勢を変えてやって、水を含ませた布で口を濡らしてあげていましたが、嫌そうな顔をするばかり。「枯れるように」という言葉の通り、タルボは自分の中から水分を抜いているようでした。

妹はそれでも、「私だったら点滴する」と言いましたが、私には、この段階から体に水を入れるのは、タルボにとっていいことに思えませんでした。タルボはときどき小さなかすかな声で鳴いていました。呼ばれて、私は少しだけ抱いたり、なでたりしました。

夜9時ごろ、妹が帰宅して少しした頃に、タルボは荒い息をし始めました。ぐわっぐわっ、というような声に、私と母は駆け寄って、タルボをなでて言葉をかけました。

「がんばったね。ありがとうね。楽しかったね。大好きだよ」

タルボは何度か苦しげに大きく息を吸いました。そして、私の顔をじっと見つめながら、最後のときを迎えました。