●不良グループたちを止めようと飛び出した本

「あんなのダメだよ、かれらを止めなくっちゃ!」

そうさけびながら、かれは家を飛び出しました。本たちは閉まったゲームセンターでメダルゲームをしていたり、ブティックで勝手に服を試着したりしています。このままでは街がめちゃくちゃです!

「おーい、みんな! 本棚に戻ったほうがいいよ!」

必死にさけびますが、だれも聞いてはくれません。かれはビルのうえによじ登り、さらにさけびますが聞く耳を持たれません。それどころかかれをせせら笑う本すらいます。ふと空を見ると、本が飛んでいます。ページを鳥の翼のように羽ばたかせて、滑空しているグループがいるのです。

これだ──そう思ってかれもビルから飛び降りて、ページを広げて飛翔します。

「みんな、聞いてくれぇ! このままじゃ世界はめちゃくちゃになってしまう!」

かれは空を飛びながら、そう訴えます。──が、やはりだれも聞いてくれません。

 

●諦めかけたとき、頭によぎったことば

もうダメなのだろうか、そう絶望かけたときにさっきの本のことばが頭をよぎりました。

「雨が降ってきたらどうするんだ」

そうです、本は水に濡れたら使いものにならなくなってしまいます。かれは地上に降り立つと、消火栓をぶっ壊します。つぎの瞬間、噴水のように水があふれだしました。

「うわぁ、身体が濡れちまう!」

本たちは慌てふためきながら逃げ出します。みんな急いで自分たちの本棚へと帰っていきました。

「あはは、これでぜんぶ解決だ」

安堵した瞬間、水しぶきがかれにもかかってきました。しまった! 自分も逃げなきゃいけません。かれは猛ダッシュで本棚にもどりました。

「ふぅ、なんとか間に合ったぞ」

 

●無事に街を救ったけど、周りの様子が変…!?

しかし、周りを見てみるとどうも変です。本たちの顔ぶれがまったく違います。そのうえ、家具の配置や部屋の形まで違いました。

たいへんです。慌てていたので、間違えて土曜の夜の天使さんの本棚ではなく、別の家の本棚に入ってしまいました。そのとき、その家の住人がちょうど本棚のまえにきます。

「あれ? この本、もう買っていたかなぁ…」

家の住人が首をひねります。その手には、買ったばかりの同じ本をもう一冊持っていました。

「あれ? あの本、どこいったのかなぁ…」

ちょうど同じ時間、土曜の夜の天使さんが本棚のまえで首をひねっていました。こういうことは、たびたび起こるのです。

 

【編集部より】

相談者のかたは、家にもう一冊あるのを見た瞬間に「前に買ったときのこと」も思い出しているんじゃないでしょうか。買ったことを忘れないために、スマホで写真を撮ったり、日記をつけたりするといいかもしれません。なにかワンアクションをつけたすと、記憶の定着がよくなるようですよ。

 

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