読者から届いた素朴なお悩みや何気ない疑問に、人気作『もし文豪たちがカップ焼きそばの作り方を書いたら』(宝島社)の作者・菊池良さんがショートストーリーでお答えします。今回は一体どんな相談が届いているのでしょうか。
すべての画像を見る(全4枚)ここはふしぎなお悩み相談室。この部屋には世界中から悩みや素朴なギモンを書いた手紙が届きます。この部屋に住む“作者”さんは、毎日せっせと手紙に返事を書いています。彼の仕事は手紙に書かれている悩みや素朴なギモンに答えること。あらゆる場所から手紙が届くので、部屋のなかはぱんぱんです。
「早く返事しないと手紙に押しつぶされちゃう!」それが彼の口ぐせです。
相談に答えてくれるなんて、なんていい人なんだって? いえいえ。彼の書く返事はどれも想像力だけで考えたショートストーリーなのです。
さぁ、今日も手紙がやってきましたよ──。
【今回の相談】ついお菓子を食べすぎてしまう。間食をやめるいい方法はある?
ついお菓子を食べすぎてしまいます。間食をやめられるいい方法はないでしょうか(PN.間食王さん)
【作者さんの回答】間食が役に立つこともある
猫のニャコラスにはある悩みがありました。あめ玉が大好きで、つい食べすぎてしまうのです。テレビのニュースなんかを見ながら際限なく食べてしまいます。
「つぎのニュースです。この星に謎の隕石が迫ってきています。このままではこの星は……」
テレビでは深刻なニュースが流れていますが、そんなことは気にせずあめ玉を口に入れ、ばりぼりと噛んでいます。でも、じつはそのくせを直したいとも思っています。
このままでは街全体のあめ玉がなくなってしまいますし、そうなったらあめ玉が食べられなくてみんな悲しんでしまいます。ニャコラスはあめ玉を食べながら同居猫のニャスティンに何気なく聞きました。
「なにかいい方法はないかな」
「催眠術がいいよ」
ニャスティンは一枚のチラシを見せてくれました。そこには「【催眠術】」とでかく書かれています。利用者の声として「最高! もうお菓子を見たくもない」と書かれています。ニャコラスはうーむとしばらくチラシをにらみつけたあと、その催眠術士のもとを訪れることにしました。
●催眠術師のもとを訪れたニャコラス。その結果は…
薄暗い部屋のなかで、テーブル越しに催眠術士が座っています。
「そんなことはとってもかんたんです」
「ほんとうに?」
催眠術士は力強く言い切りました。
「わたしが独学で編み出し、ニャンブリッジ大学の実験で効果が実証されたニャンタリズム催眠術を使えば一発です。さぁ、この線香の煙を強く吸い込んで…」
ニャコラスは言われるがまま線香の煙を吸い込みます。線香のにおいがしました。
「これでもう大丈夫です」
「ええっ?」
「試しに食べようとしてみてください」
催眠術士はテーブルのうえにあめ玉をたくさん置いてぼりぼりと食べはじめます。しかし、ニャコラスがあめ玉を手に持っても口に入れようという気になりません。
「ほら、大成功だ」
催眠術士は口いっぱいにあめ玉を頬張りながらウインクしました。