キッチンは家族が日々交わる大切な場所だからこそ、使いやすさや居心地にこだわりたいもの。そこで理想のキッチンを実現するためのヒントが詰まった、建築家の自邸のキッチンをご紹介します。伺ったのは建築設計およびインテリアデザインに特化したデザインファーム「TYRANT」代表の松葉邦彦さんのお宅です。
すべての画像を見る(全14枚)将来の住み替えを見据え、「普通」に暮らしやすい家に
1年前に中古マンションを購入した松葉さん。終の住処ではなく、将来的に住み替えを考えているので、もとの間取りを大きく変えることなくリノベーションを行いました。今後、賃貸に出すことを念頭に「建築家の個性が際立つようなリノベではなく、一般的で暮らしやすい普通のリノベにしよう」と考えたそう。
キッチンはイチから図面を描いて造作するのではなく、システムキッチンを採用することに。「既製品のなかから自分が納得できるものを探すとなると、それはそれで大変でしたね。気になるショールームは全部見に行きました(笑)」。
デザイン性が高く手頃な価格、天板はステンレス、魚焼きグリルは使わないからその分コンロの口数が多いものを希望し、最終的にウッドワンのシステムキッチン「スイージー」をセレクト。
松葉さんの家のDATA
- 所在地:東京都
家族構成:夫40代 妻40代 長女5歳
専有面積:50.6㎡
キッチンは黒、グレー、木。インテリアを厳選した3色で構成
無難だからという理由で壁の仕上げに白を選ぶ家が多いなか、松葉さん宅には白の要素がほとんど見当たりません。壁には布のようなテクスチャーのグレーの壁紙を。その壁の色に合わせて、スイッチプレートやコンセントプレートもすべてグレーで統一されています。
造作の収納はつくらず、以前から使っていた無印良品の木製オープン棚に食器や食材を収納。掃除のしやすさを考えて、床にはタイルを採用しました。
アイデアのきっかけは、以前とある飲食店の内装デザインを担当したことでした。店内のすべてをグレー1色にしたいという要望に初めは驚きましたが、グレーを空間に取り入れることの心地よさに気づいたという松葉さん。
そこで、自宅をリノベする際、全体のトーンは木とグレーでまとめ、照明や家電にポイントとして黒を取り入れました。キッチンの面材や床のタイルにはグレーを選び、取っ手や家電、ゴミ箱は黒で統一。それだけだとクールな印象になりがちですが、食器棚として利用しているオープン棚やダイニングの家具に木製のものを選んだことで、温かみがプラスされ、落ち着きのある空間が完成しました。
調理道具はコンロ前の壁につるすことで、調理がスムーズに。グレーのコンセントプレートは「神保電器」のもの。
コンロは魚焼きグリルのない「リンナイ」の4 口タイプを選択。4 口あることで一度に調理ができるのはもちろん、鍋やフライパンの一時置き場としても重宝。
イスを集めるのが好きな松葉さん。自身が手がけたイスも含めて、ダイニングのイスはあえて一脚一脚違うものでコーディネート。