人づきあいが苦手な高校生の佐山うららと、ひとり暮らしの老婦人、市野井雪。年齢も生きてきた環境も異なる2人が、BL(ボーイズラブ)マンガを通じて、友情をはぐくむ…。年齢を超えた交流を描いた同名コミックを映画化した『メタモルフォーゼの縁側』。原作のあたたかな空気感そのままに、2人を演じた芦田愛菜さんと宮本信子さんにお話をうかがいました。

『メタモルフォーゼの縁側』芦田愛菜さん・宮本信子さんインタビュー

芦田愛菜さん・宮本信子さん
宮本信子さん(左)と芦田愛菜さん(右)
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インタビュー前、本作のポスターを見ながら「このポスター、いいわねえ」「後半に撮ったシーンですよね」と、なごやかにお話ししていたおふたり。まずは原作を読んだときの印象から話していただきました。

芦田愛菜(以下、芦田):原作を読んで「すごく好きだな」と思ったのが第一印象でした。自分に自信を持てなかったうららが雪さんと出会って、好きなマンガの話で生き生きしていく。その姿を見ると、私も好きなものを好きと胸を張って言っていいのかな、自分のことを認めてあげていいのかな、と思えて。雪さんがうららを受け止めてくれたように、自分もこの作品に温かく包み込んでもらえるような気持ちになりました。

宮本信子(以下、宮本):本当に、鶴谷香央理さんのお描きになる原作が、なんともいえない温かな雰囲気でね。雪さんは人生の終わりが近づいていて、とくに不満はないけれども、さみしさや孤独感も当たり前のものとして感じている。そんな雪さんと、ちょっと心を閉ざしたところのあるうららが、一冊の本を通じて信頼を深めていく。なんて素晴らしい世界なんだろうと思いました。

メタモルフォーゼの縁側場面写真
映画『メタモルフォーゼの縁側』より

芦田:そういう原作の雰囲気がとても好きだったので、演じるときもそれを壊したくない気持ちがいちばんにあって。撮影中も原作を何回も読み直して「こういうとき、うららはどんな顔をするのかな」「どんな行動を取るのかな」と確認していました。

宮本:私の場合、あまり原作を読みすぎるとそちらにとらわれてしまうので、原作と脚本というのは別のものとして考えています。もちろん、原作から得た自分の解釈や作品がもっているものは踏まえつつ、今度は脚本という人間ドラマになってくるので。でも本当は、愛菜さんのやり方も私のやり方も、どちらも同じなんですけどね。

 

●お互いの関係性があったからこそ、丁寧に作品をつくることができた

芦田愛菜さん

じつは10年前に、映画『阪急電車~片道15分の奇跡~』で共演していた芦田さんと宮本さん。当時は“孫とおばあさん”として共演したおふたりが、久々の再会で感じたことは…?

芦田:今回の作品の顔合わせをしたときに「これからよろしくね、頼んだわよ」という言葉をいただいて、すごく嬉しかったんです。その感覚は、うららと雪さんの関係をつくっていく上でも影響しました。終盤にうららが落ち込んで泣いてしまうシーンがあるんですけど、そのときに宮本さんが向けてくださっているまなざしが、私の背中を押してくれているように勝手に感じていて…。もちろん雪さんからうららへ向けたものなんですけど、そういう関係性をつくってくださったので、毎日お芝居するのが楽しかったです。

宮本信子さん

宮本:相手役が愛菜ちゃんと伺ったとき、まず「ああよかった」と思いました。やっぱり初対面でうららと雪の関係をつくるのは難しいと思っていたので。

もちろん相手が誰であっても芝居はできるんですよ。でもそこに、心の底から湧き上がる情愛や、うららが泣いたときに「がんばれ」と背中をなでてあげるような関係性をつくるのは、とてもデリケートなことなので。とくにこの作品は大きなドラマが起きるわけではないので、非常に丁寧につくっていかないといけない。だから本当に、愛菜ちゃんでよかったです。

芦田:そう言っていただけてうれしいです。今作では、宮本さんが納得いくまで台詞を言ったり、現場を動いたりしている姿がとても印象的で。私も見習いたいなと思いました。

宮本:本当に立派になられて。もう愛菜ちゃん、ではなく愛菜さん、よね(笑)。みなさんもご存じでしょうけど、もう長くこの世界にいて勉学と仕事を両立しているわけですから。なかなか強いわよね。きっと私の3倍くらい強いと思う(笑)。

芦田:ありがとうございます(笑)