読者から届いた素朴なお悩みや何気ない疑問に、人気作『もし文豪たちがカップ焼きそばの作り方を書いたら』(宝島社)の作者・菊池良さんがショートストーリーでお答えします。今回は一体どんな相談が届いているのでしょうか。

本
今回は、本の“積読”についてのお悩み
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タイトル

ここはふしぎなお悩み相談室。この部屋には世界中から悩みや素朴なギモンを書いた手紙が届きます。この部屋に住む“作者”さんは、毎日せっせと手紙に返事を書いています。彼の仕事は手紙に書かれている悩みや素朴なギモンに答えること。あらゆる場所から手紙が届くので、部屋のなかはぱんぱんです。

「早く返事しないと手紙に押しつぶされちゃう!」それが彼の口ぐせです。

相談に答えてくれるなんて、なんていい人なんだって? いえいえ。彼の書く返事はどれも想像力だけで考えたショートストーリーなのです。
さぁ、今日も手紙がやってきましたよ──。

 

【今回の相談】本を買っても読まずに“積読”してしまう

相談者

本を買っても読まずに“積読”してしまいます。どうしたら積読せずにすむでしょうか。

(PN.黄色いイナズマさん)

 

【作者さんの回答】石版は何万年も前の気持ちを刻んでいるから

作者

ここは原始時代。まだコンビニもカフェもショッピングモールもなくて、広い大地にはありません。人間はみんな石器を持ち、動物の毛皮を見にまとい、マンモスを追いかけて暮らしていました。たまに失敗すると、マンモスに返り討ちにされてしまいます。

そんな時代を変えようと、ひとりの男が立ち上がりました。いつの時代にも、スティーブ・ジョブズのようなイノベーターがいるものです。かれはある日、すごい発明品をしたとひとびとを集めました。

 

●みんなが思わず驚いた発明品とは…!?

かれはタートルネックの毛皮を着て、一段高い場所に立ちました。

「今日は革新的でとてもすばらしいプロダクトを発表するよ。これをみんなに発表できることがとってもうれしいよ」

かれは誇らしげに四角い石の板を取り出しました。聴衆からおおっと嘆声が漏れます。

「石版だ」

男は板の表面を愛おしそうになでます。

「これがすごくいいんだよ。重要なことをここに書いて保存することで、あとから見たひとに大事なことを伝えられるんだ」

そう言うと、男は石槍で石版をがりがりと削ると、その表面をひとびとに向けました。そこにはこう書かれていました。

「マンモスは崖から落とせ!」

その瞬間、広場は拍手喝采となりました。「石版! 石版!」と歓声があがります。
次の日からみんな石版をがりがりと削り出しました。ものごとの伝達にとても便利だったからです。

「野菜炒めの作り方→野菜を炒める」
「置いてあった骨付き肉、食べました」
「こないようなので、帰ります」

みんな未来の誰かに伝えたいことを、石版に刻みだしました。
小さい子どもだってガリガリと石版を削ります。自由気ままに、いまの気分を石版に刻み込みました。ある子どもは石版にこんなことを書きました。

「😀」

そこには笑顔になっているひとの顔が書かれていました。「これはすごい!」と絵文字も流行りました。石版には絵だって書くことができるのです。
いろんなひとが石版に文字を刻みました。みんなそれをあとで読んで、泣いたり、笑ったり、感心したりしました。