家庭的でありながらも美しい料理が人気の料理研究家の大原千鶴さん。55歳を超えて、忙しくても、暮らしを段取りよくまわせたらいい。そう考えて、自宅のキッチンを改装しました。それを機に、心地よい暮らし、空間づくりを心がけるようになったそう。そんな大原さんの暮らしについて教えてもらいました。

大原千鶴さん
料理家の大原千鶴さんの暮らしについてうかがいました
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大原千鶴さんが心がける「昨日より今日、今日より明日、心地よい場所に」

大原さんの新刊『むりなく、むだなく、きげんよく 食と暮らしの88話 茶呑みめし』(文藝春秋社刊)では、子育てを経て、今の大原さんを表現した本になっているそう。

本書に描かれている大原さんの暮らしは、心地よさそうであることはもちろん、読んでいると不思議とワクワクしてきます。

大原さんはどのように今の心地よい生活を構築されていかれたのでしょうか。

 

●大原さんが意識したキッチンの動線

「毎日の暮らしの中で、『こうした方が便利になる』『快適になる』ということをいつも考えています。

日々、なにかひとつでも改善できたことがあると毎日が楽しくなりますよね。例えば、結婚した当時も、主人の母の古いキッチンの、火力が弱いガス台だけでも新しくしたいと自分で取りかえたり。少しずつカスタマイズしていって、昨日よりも今日、今日よりも明日、少しでも便利になるように、と暮らしている延長線上で、それに合わせて暮らしを変えてきた、という感じですね」

大原さんとキッチン
料理だけでなく、ものの出し入れ、掃除のプロセスまで考えているそう

あつらえのキッチンがあれば、多くの人は「こんなものだ」と思って受け入れてしまう部分はあります。でも、大原さんは少しでも便利なように、と改善をしていく中で、自分が目指すキッチンの方向性が自然と決まっていったといいます。その中で、重要になってくるのが日々の動線です。

「じつは、動線は人によってそんなに大きく違うものではないんですよね。だいたい冷蔵庫から出したものを洗って切って、調理して盛りつけて…。そうやって毎日使っていると、使っていないものって意外とたくさんあるんです。

キッチンで使うものはキッチンに置いておかないといけない、と思っていますけど、そんなことはないんです。たまにしか使わないミキサーとか、ホットプレートは、思い切って違う収納スペースにしまうことも。動線上に要らないものがあると、無駄な動きができてしまうんですよね」

 

●好きでも使わなかったら処分 洗練されていくもの選び

使わないものはどんどん処分していっているという大原さん。フリマアプリも活用し、フリーマーケットにもよく出店していたのだとか。そのため、大事にしているもの以外で、使わないのに置いている、というものはほぼ家にはないと言います。

「ストイックになりすぎるといけないから、『これはどうしようかな』というものは決めた箱に入れておいて、しばらくしてふんぎりがついたら処分するようにしています」

そうしているうちに、自然と自分が使っていきたいと思うものも決まっていくのだそう。

「例えば、食洗器を使っているんですけど、そうするとおしゃれやな、と思って買った食器でも、形が複雑だったり、欠けやすかったり、という器はどうしても使わなくなってきます。

だから、普段の生活はスムーズにストレスなく暮らしていけるように、食洗器にもかけられて頑丈で、そんなに高くなくて使ってて嫌じゃないもの、使っていて幸せになるものをセレクトするようにしています」

そのため、食器も定期的に入れ替わっているのだそう。好きだと思って買っても、使わなかったらどんどん処分。料理を盛って映えない器も頻度は当然落ちていきます。

「料理が映えるという点では、やっぱり無地のものがいいですね。ちょっと汁溜まりがあるような感じ。まったいらなお皿っておしゃれに見えますけど、盛りにくいし、綺麗に盛るのにはストレスがかかるんです。それが、少し窪みがあるだけでも使いやすくなります。色は、白でも風合いのある乳白色のものだとか、ベージュ系や少しピンクが入っているものの方が、お料理が明るくなります。ブルー系も、温かみのあるものの方が料理は絶対においしそうに見えます」