子ども時代から、新しい家族をつくった今まで...。親との関係、義父母との関係はなぜこうもやっかいなのか。

ESSE読者が体験した「親ともう縁を切った方がいいかも」と思った瞬間を取材しました。

こじれた母娘の仲
いちどこじれた母娘の仲は、孫が生まれても変わらず…(※画像はイメージです)

義母とは暮らせているのに…。2人目の出産時には母に頼ることをやめました

高島なおみさん(仮名) 神奈川県・30歳

【家族構成】

義父(68歳)、義母(62歳)、夫(32歳)、長女(5歳)、長男(3歳)
実家の家族構成 父(65歳)、母(62歳)
実家との距離 クルマで1時間弱

「中学校の先生だった母は忙しく、食事はいつも1人。運動会や授業参観にも来てもらえませんでした」と語る高島さん。
高校時代にグレてしまい、母はそれを見て退職するも、できた溝は埋まらず…。
結婚を機に家を出て、現在は「縁を切るつもりはないが距離をとっている」という高島さんに、親との確執を語ってもらいました。

●いつもひとりぼっち寂しさでグレた高校時代

幼い頃は寂しかった思い出しかありません。中学校の教員だった母は、いつも忙しく帰宅は20時を回ることもしょっちゅう。母がつくった料理を食べた覚えがあまりなく、幼稚園の頃は毎日できあいの弁当を食べていました。

小学校に入ってからは、どうしてもおなかがすいてしまい、かといってガスを使うと怒られるので、自分でご飯を炊いて、冷蔵庫にあるものをおかずにして、しのぐという生活。中学生になってからは、1人でなにかを買ってきて食べていました。

父は愛情深い人でしたが、仕事が忙しく、夜は外食がほとんど。なので、ひとりっ子の私は母が帰宅するまでいつもひとりぼっち。
母はたぶんいい先生だったのだと思います。生徒の指導に熱心で、家に帰ってきてからも採点やら準備やらでいつも忙しかった。私よりも自分のクラスの生徒のことがかわいいんだな、と思っていました。

よその家庭とは違うとはわかっていました。でも、忙しいから仕方がない、と妙にあきらめていたので、「お母さんと一緒にご飯食べたい」とか「おうちにいてほしい」などと、自分の思いを口にすることはいっさいなかったように思います。

それで、高校生になる頃に、私、グレちゃったんです。はじめは寂しさからだったのかもしれません。家に帰ってもだれもいないし、友達と遊び歩いていた方が楽しいし。それで高校年生の頃には、全然家に寄りつかなくなっていました。

母はそんな私の変化におそらく気づいたのでしょう。ある日突然、仕事を辞め、「毎日家にいるお母さん」になりました。でも、私はすでに家にいることはあまりなくなっていたし、たまに帰って母と顔を合わせてもギクシャク。小さい頃のコミュニケーション不足からできてしまった溝は、思春期にいきなり埋められるものではありませんでした。

●出産したら母の気持ちがわかるかなと思ったけれど

その後、私は母と精神的に距離のあるまま結婚。義父母と一緒に住むことになったのですが、夫の母は温かく優しく、まったく問題は起きません。

最初の子の出産のとき、実家の方が安心だろうと夫にすすめられたこともあり、里帰り出産をしました。思えば、母と長時間一緒に過ごすのは初めての経験。はじめは少し、期待があったのかもしれません。でもダメでした。

母は、以前とは違って時間がありあまっているはずでしたが、家事は苦手だったのかな、ほとんどなにもしなかった。私がたまらず大きなおなかで動くと、自分が責められたように感じるのでしょう。「やればいいんでしょ!」とイヤイヤ動く。それで私も動くに動けず、悶々としてしまい、何度も途中で帰ろうか、と思いました。

産後は協力してくれましたが、私はなぜか母に、娘を抱っこしてもらいたくなくて。とにかく一刻も早く自宅に戻りたかった。母の手を借りるより、1人で育児に追われた方がいいと思いました。

その後2人目を授かりましたが、最初の子でこりてしまい、里帰り出産はもうしませんでした。今は、必要なときに連絡をとる程度で、こちらから母に連絡をとることはありません。
でも、父には愛情を感じているし、幸い父と夫は仲がいいので、父のいる土日を見計らっては、家族で実家に顔を出すようにはしています。

こんなこと絶対ないと思うけれど、もしも母と心から話し合えるときが来たら、聞いてみたいことがあります。それは、どういう気持ちで私を育ててきたのか、なぜ私との時間をつくらなかったのか、ということ。仕事のせいだったのか。私のことが嫌いだったのか。

出産したら母の気持ちがわかるかな、と思っていたけれど、さらにわからなくなりました。でも、私の心のどこかに、母をわかりたい、できれば母を認めたいという気持ちがあります。
いっそ、縁が切れたら、ラクなんでしょうね。でも切りたくない、切ってはいけないとも思う。これが血のつながりというものなのでしょうか。