家づくりで人気の対面キッチン。空間の開放感や、家族や来客と向き合いながら調理や片づけもできる使い勝手が魅力です。でも「キッチンの散らかりが、丸見えになってしまわないか」といった不安の声もあるよう。ポイントとなるのは、カウンター形状の工夫です。家族の暮らし方にあう対面キッチンについて、一級建築士の新井崇文さんが解説。自身の設計した事例を交えて、わかりやすくポイントを語ります。
すべての画像を見る(全22枚)対面キッチンの特徴と向き不向きについて
対面キッチンとは、キッチン(シンク・コンロなど)をダイニングと向き合う形で配置したもの。キッチンで調理や片づけをする人が孤立せず、ダイニングやリビングの様子がわかるメリットがあります。
対面キッチンの場合、一般的にはダイニングと連続した空間にします。従って「部屋として独立したキッチンで気兼ねなく調理に専念したい」という方には向いていないでしょう。
一方、「家族や来客の様子に目を配りながら調理・片づけをしたい」「来客時にも、ゲストと会話を続けながらお茶の準備をしたい」という方には、対面キッチンがおススメです。
キッチンにはさまざまな食材や調理器具があり、食事後には使い終わった食器が集まります。これらを「見せないようにしたい」と考えるか。あるいは「見せても大丈夫」と考えるか。その答え次第で、キッチンの最適なカウンター形状は異なります。
具体的には、以下のように対応することになります。
・見せないようにしたい →カウンターに立ち上がりを設け、手元隠しをする
・見せても大丈夫 →カウンターはフラットのままで、使用後にはカウンター上をきれいに見せられるよう工夫する
では、筆者が設計した事例をもとにご紹介していきます。
立り上がりカウンターの事例(1)
まずはカウンターに立ち上がりを設けたお宅の事例です。奥にキッチン、手前にダイニングとリビングがあります。
キッチンに立つとこのような眺め。立ち上りで手元は隠しながら、視線はダイニング・リビングから窓外のバルコニーまで抜けていき、開放感があります。
ちなみに、キッチンのカウンター高さは900mm。そこからさらに200mmの立ち上りを造作家具で設けました。
造作家具の立ち上り部分は、キッチン側に掘り込みを設け、手元は隠しながらキッチン用品を収納できる工夫をしています。
キッチン背面は造作のカップボード。調理・配膳やお茶入れなどもできるカウンターがあり、上下は収納となっています。
この家の場合、カップボードの並びにはデスクコーナーがあります(写真中央)。ワークスペースとしてリモートワークに、また、子どものスタディコーナーに使えます。両親は調理や片づけをしながら、子どもの勉強の様子を見ることができます。
ダイニングやリビングとは別に、このようなスタディーコーナーがあるととても便利。リビングやダイニングに、仕事や勉強道具が散乱することがないので、「片づいていなくてイライラ」ということも避けることができます。テレワーク需要が増えている昨今、とても重宝するプランではないでしょうか。
デスクコーナーの背面には半間幅のパントリー棚があり、食材や調理器具・収納用品をしまうことができます。対面キッチンの場合、キッチン回りをきれいに保つことはとくに大切です。こういったパントリー収納は、心強い味方となります。
立り上がりカウンターの事例(2)
カウンターに立ち上がりを設けたお宅の事例をもうひとつ。手前にはリビング・ダイニング、奥には右手がデスクコーナー、左手がキッチン、その奥はパントリーが配されています。
ダイニングとキッチンは、ほどよくつながりつつも、造作収納の立ち上りによりキッチンの手元が隠されています。
キッチンのカウンター高さは900mm。住まい手の要望により、そこからさらに300mmの立ち上りを造作家具で設けました。
造作家具の立ち上り部分が300mmあると、キッチン側の掘り込み部分にもかなりのキッチン用品が収納できます。また、木カウンターの側部にパイプを1本通し、ふきんを干したり、キッチン用品をつるしたりできるようになっています。
キッチンの奥には約1.4畳サイズのパントリーがあります。